バービーは今や時の人。バービー人形を製造する米マテル社が、従来のバービーに加え、ぽっちゃり、小柄、のっぽの3パターンの体型の人形を発売すると話題だ。
この〈バービーFashionistas〉シリーズは、肌も全7色、目22色、髪型は24種とバリエーションに富み「美の多様性を提案する」ものだという。ステレオタイプ的な女性美の象徴とされ、愛されも疎まれもするバービー誕生から56年目の歴史的な変革だ。3月にはパリ装飾美術館でバービー展が開催されるし、ネットではイスラムの女性が被るスカーフ「ヒジャブ」を被ったバービー「Hijarbie」のファッション写真も人気がある。
バービーは人形でありながら人格を与えられ〈一人歩き〉している感がある。ゴルチエやラクロワなど一流デザイナーたちが彼女のためにドレスをデザインし、比類なきワードローブを持つ彼女は、カーレーサーや宇宙飛行士など150種もの職に就き、米大統領選に4回も立候補した野心家の顔も持つ。そんなバービーの体型を今さら変えなくてもいいのではないか。「バービーで遊ぶ子供が、自分がバービーに似ていないとコンプレックスを感じる」としても、バービーはバービー、自分は自分、と現実を受け止めなきゃいけない時はやってくる。それに、あのボディと顔、ブロンドの髪でこそバービーだ。嫌ならバービーと遊ばなければいい…こんな論争にうんざりしたのだろう、バービーは、米TIME紙にカバーガールとして登場し、「もう、あたしの体の話、やめてくれない?」と言っている。
「人形も時代とともに変化する」といって、人形の形を変えるより、「女の子には、お人形」と、性別によって型にはまった行動パターンを子どもに押し付け、その子の可能性を埋めてしまう因習こそ、変えたほうがいいような気がしてならない。(六)