有機農家で作家のピエール・ラビ (1938-)を、エコロジーの世界では知らない人はいない。アルデッシュでゼロから農業を始めたラビが経験から紡ぎ出した言葉はシンプルでわかりやすく、多くの人から敬愛されている。その彼が発案し、2007年に若者たちが始めたのがコリブリ運動だ。ラビがよく講演会で話すアマゾンの伝説がある。森で火事が起きたとき、動物たちは慌てふためいたが、極小のハチドリ(コリブリ)は、小さなくちばしで一生懸命水を運んで火を消そうとした。それを見た他の動物が「お前が運ぶ水でなにができるんだ」と馬鹿にすると、コリブリは「自分ができることをしている」と言ったという。その伝説から、コリブリのように小さな力でも自分にできることからやっていこう、そうすれば世界は変わる、というのがMouvement Colibris(コリブリ運動)だ。環境も人間も大切にする社会を作ることを目指している。
活動のひとつに、期間限定で行うキャンペーンがある。2012年の大統領選挙の時は、全市民が選挙に立候補しよう、と呼びかける「皆が候補者」運動だった。一人の人に権限を委ねるのではなく、全市民が自分の行動と社会に責任を持つことを求めた象徴的な運動で、3500人が立候補を宣言した。2013年1月からは、地域で具体的なアクションをしようという「(R)évolution Colibrisコリブリ革命(進展)」が始まり、地域通貨を作る、生産者と直接農産物を取引する、といった提案が実現されていった。
2016年1月からは、どこにでもオアシスを作ろうという「オアシス運動」が始まる。複数の人が住むエコハウス、エコヴィレッジを建設したりして、空間とサービスを共有しようという運動である。
どんな運動なのかイメージできない、という人には、コリブリの創始者の一人、シリル・ディオンさんが共同制作したドキュメンタリー映画 「Demain 明日」がお勧めだ。地域から社会を変え始めている世界中の人々を紹介している。12/2公開。(羽)
http://www.colibris-lemouvement.org/