2015年 コンペティション部門の行方は?
今年、最高賞パルムドールを目指すコンペティション部門に選出された作品の監督は19人。この中で掛け値なしに巨匠と言えるのが、ホウ・シャオシェン、ガス・ヴァン・サント、ナンニ・モレッティあたりか。なかでもスー・チーが女刺客に扮し、日本の妻夫木聡も出演するシャオシェンの武侠時代劇『黒衣の刺客』は注目度が高い。本作は5年前に撮影開始となったが、度重なる中断で完成が危ぶまれていた。この度のお披露目は嬉しい限り。富士の樹海が舞台となるガス・ヴァン・サント監督『The Sea of Trees』は、マシュー・マコノヒーと渡辺謙が共演。今年は日本人俳優の活躍が目立ちそうだ。
これまで「コンペに同国の作品は4本まで」という暗黙の了解があったが、今回フランス映画は5本も登場。ジャック・オディアール、マイウェンに加え、コンペ初参加組としてはヴァレリー・ドンゼッリ、ステファヌ・ブリゼ、ギョーム・ニクルーが選ばれた。「カンヌは身内に甘い」という声をかわし、フランス映画の実力をどこまで見せてくれるだろう。
ヨルゴス・ランティモス監督の『The Lobster』は、映画祭ディレクターのティエリー・フレモーが、「すべては理解できない」と形容した異色作。マイナーともいえるギリシャ映画に、レア・セドゥ、コリン・ファレルら大スターが集まったのも驚き。個人的には、前作『オスロ、8月31日』が傑作だったノルウェー人ヨアキム・トリアー監督の『Louder Than Bombs』が最大の楽しみ。台風の目になってくれるのではと勝手に期待している。初長編作にしてコンペ入りという離れ業をやってのけたハンガリー人ラズロ・ネメス監督『Son of Saul』も気になるところ。
駄作を撮らない中堅の巨匠ジャック・オディアール、ジャ・ジャンクー、パオロ・ソレンティーノ、ドゥニ・ヴィルヌーヴなどもパルムに近そう。世界にファンを持つ是枝裕和は、コンペでは唯一の日本人監督。吉田秋生原作の人気コミックを映画化した『海街diary』は、綾瀬はるか、長澤まさみら有名女優が豪華に集う。授賞式は5月24日の18h50からカナル・プリュスで放映予定、審査委員長はコーエン兄弟だ。