KIRIBATI
soutien-gorge ampli mousse et le string, 59€ - 38€
高級ランジェリーの老舗ルジャビ社が2012年に倒産したことが話題になった。90年代初めに1200人の社員を擁した同社は国外に生産拠点を移し、次々に国内工場を閉鎖して2010年には国内生産の割合は30%に。倒産後、「メゾン・ルジャビ」と「レザトリエ」が再建されたが、後者は2月に倒産した。
こうしたランジェリー国内生産の衰退のなか、100%メイド・イン・フランスを継続しているのがアランド社(Allande)だ。国外生産品との価格競争に対抗するため訪問販売とネット販売しかしていないので、一般にはあまり知られていないが、フランスの誇るカレー産レースやノール地方の刺繍のほか国内・欧州の材料を用い、伝統的ノウハウを生かした製品を作り続けている。
ポワチエからリモージュ行き列車で起伏に富んだ緑の田園地帯を行くこと1時間。ル・ドラ (Le Dorat)はロマネスク様式のコレジアル・サン・ピエール教会が堂々とそびえる中世の町だ。さっそく、46人が働く町外れのアトリエに案内され、ブラジャーと水着の製造工程を見せてもらった。
デザインを元にパターン化した型紙を大きな布に効率よく取れるようにコンピュータで配置した紙が布に当てられ、機械を使って手作業で切る。下着を構成する布は小さいので細心の注意が必要だ。レースや刺繍生地は同じ場所に柄がそろうように、これも手作業でピンにひっかけてそろえる。そうした材料がそろうと、細かい工程表をもとに工程ごとの担当者がミシンで縫っていくわけだが、なにしろ布が小さくてカーブを描いている上に、レースや刺繍生地も入るために作業が細かい。手で布を折り返しながらミシンを数秒で止めてまた進める作業を見ていると、これは大変な熟練が必要だと思った。ブラだと、カップ部分、ワイヤー入れ、カップと背中をつなぐ部分のゴム縫い付け、ホック、肩紐、飾りリボンなど工程は約30もある。縫い上がると、品質とサイズを一つ一つ人の目でチェックする。
生産に入る前のステップも大事だ。社長の娘カトリーヌさんが素材選択とディテールに工夫を凝らしてデザインしたものの型紙が作られる。その試作品のみを作る「プロトティピスト」という人がいて、試作段階で技術的な問題がないかをチェックする。これを担当する(別の)カトリーヌさんは、「毎回、違うものを作るから楽しい。デザインはよくても技術的に無理でボツになるものもかなりありますよ」と教えてくれた。それを無事にクリアすると、試作品を社員や外部の人に実際に身につけてもらって不具合を改良する。そしてOKが出て、はじめて本格生産となるわけだ。
フィリップ・ルフェーブル社長によると、1989年から大手流通業のためのランジェリーを生産していたが、外国生産との競争が厳しくなった94年にアランドを立ち上げた。現在、1600人の販売員を擁し、年商2000万ユーロで経営はまずまず安定している。年間30万ユーロ売り上げる販売員もいるが、安定した手数料収入を稼げる販売員を育てていくのが難しいのが悩みだ。
「アジア産がフランス産より品質が劣るとは思わないが、製造を外国に頼るのはよくない。日本政府が国内農業を保護するように、欧州も欧州の産業を守るべき。フランスでの生産にこだわるのはそういう信念だ」。仕入れに加え、デザインから生産 (ヴォージュ地方にも56人のアトリエ)まで近くにあると、品質も管理しやすいのが利点だという。(し)
www.allande.fr
Allandeの高級ランジェリー。
3本の紐からなる肩紐を仕上げていく縫製人。
形もまちまちな小さな布を切るには細心の注意が必要。