Made in France, フランス, 特産品
他の先進国同様、フランスでも工場の国外移転などによる産業の空洞化が顕著だ。調査によると、2014年に217の工場が倒産などによって閉鎖した。新たに開業したのは163工場。リーマンショック直後の2009年からだと、14年までに1576カ所が閉鎖し1000カ所が開設。空洞化は、雇用を失わせるだけでなく、長年培ってきたモノづくりのノウハウが、それを持つ人々とともに失われていく。そんな状況のなかでも、フランスで開発された独自の技術や伝統技術を生かしてモノづくりを続けている企業がたくさんある。新連載 〈Made in France〉では、そうした大小、有名・無名企業の生産現場を毎月紹介していきたい。
第1回目は、モントブール元経済相がメイド・イン・フランスの象徴として掲げたマリンボーダーシャツ。彼が自ら身につけて写真におさまったのはArmor-Luxだが、同社の製品は約40%しか国内生産されていないらしい。そこで100%国内生産を誇る〈Orcival〉の工場をリヨン郊外に訪れた。
Orcival商標のコットン100%のマリンボーダーシャツを製造しているのはレーヌマイユ社。Orcivalは第2次大戦中、1939年にパリで商標登録されたが、戦争のためリヨンに移転。47年から徴兵制廃止の1996年まで海軍に納品していた。73年に郊外に移転。93年にレーヌマイユ社に買収された。
パトリック・ベレンス社長自らが工場を案内してくれた。綿糸はウズベキスタン、エジプト、米国産の綿を欧州で製糸したものを使う。この工場には横長の編み機「Rachel」1台と円形の編み機2台がある。円形編み機で50個ほどのボビンから糸が繰り出し、それが綿ニットの生地となっていく様はなかなかの圧巻! この工程の責任者クリスチャンさんはニット産業で知られるロアンヌの出身で、綿ニットの道40年。編み機の修理もできる根っからの職人だ。「品質には誇りを持っている」と胸を張る。そうして編まれた幅3.2mの生地は手作業で平らにならして重ねられ、小さな切断機を使って手作業でカットされる。布地に付けられた線に沿ってブレもせずにきれいに切り取る職人技を見せてくれたのはテレーズさん。次にミシンで縫製するのだが、前身ごろと後ろ身ごろで縞がぴったり合うように縫い合わせ、袖付け、すそや袖のかがり、マークの縫い付けなど、工程ごとに違うミシンと人が担当する。これも技術と経験が必要だ。最後に、不良品がないか人の目で1枚1枚点検し、折れ針検知器にかけてから手で丁寧に折りたたんで袋詰め。一品一品丁寧に作られているのがよくわかる。社員は30人。30年前はフランス人がほとんどだったが、今では7国籍が混在している。
ベレンス社長は「高級品として売るつもりはないけれど、品質は最高のものを作っている。大量生産ではないので、うちの商品を愛用してくれる顧客の意見を世界中で直接聞ける」という。国内のみならず、日本を含む15カ国のセレクトショップを厳選して販売している。米国に3年間滞在しMBAを得たベレンス社長は国際派ビジネスマン。〈100%メイド・イン・フランス〉というコンセプトであえて小規模ビジネスで勝負するなかなかの策士と見た。(し)
merci
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