ギリシャのルネサンス?

1月26日付リベラシオン紙。
1月26日付リベラシオン紙。
 ギリシャ政界に、急進派連合(シリザ)のチプラス党首がすい星のごとく現れ(2009年支持率4.6 %→12年26.9 %)、1月25日の総選挙で、シリザは二大政党を引き離し36.5%で第1党に。300議席中149 議席(第1党は50議席追加)を占め、若干40歳の新首相に。単独過半数を確保するため、意外にも宗教・ポピュリスト色の強い独立ギリシャ人党(カメノス党首)と連立内閣を樹立した。
 しかし、この5年間、ギリシャを財政危機から救うため、EU支援国(フランス:国民1人700€に当たる400億€、ドイツ600億€)や国際通貨基金IMF、欧州中央銀行が、トロイカ貸付金3400 億ユーロ(国内総生産額の175%)を融資した。それらの返済期限も迫っている。 
 これらの融資と引き換えに、国民生活を無視した屈辱的な緊縮政策を強いられたサマラス新民主主義党前首相は選挙に大敗した。彼は、シリザが与党になれば、まちがいなく共産主義体制が敷かれるだろう、と市民に恐怖感を吹き込んだが、有権者は1974年に崩壊した軍事独裁政権後40年間、中道派と社会党派政権が金持ちの脱税を許し、ヤミ市場と汚職を横行させた政治に終止符を打つ。
 経済的沈没が止まない中、失業率は倍増し30%、公務員解雇、医療予算削減で健康保険の停止、医師の給与も半分に減額、島々の病院も閉鎖。国民所得は25%減り、家賃も払えず若年層は隣国に移住する。上記3機構がギリシャに課した容赦ない緊縮政策は、国民を経済的ドン底に押しやり、貧困から激貧に陥れた。こうした緊縮政策へのギリシャ人の怒りが、欧州連合に経済よりも社会的連帯性の必要性を突きつけ、「欧州の春」の先陣を切った。フランスの左翼戦線メランション代表もシリザに倣い勢いづく。
 こうした実態に直面したチプラス首相は、緊縮財政の破棄や返済期限の延長、ユーロ圏からの離脱説を唱えたからメルケル独首相やEU諸国首脳は震え上がった。ドミノ式にスペイン(1/31日マドリードでイグレシアス党首を先頭に反体制派ポデモス党支持者30万人が行進)やポルトガルに飛び火することを恐れるからだ。が、メルケル首相やユンケルEU委員長は「借りたお金は返すのが当然」と四角四面の姿勢で数字とにらめっこ。
 イデオロギーよりもプラグマティックな具体策を打ち出すチプラス新首相は、経済復興のため最低賃金500€を700€に引き上げ、30万人の雇用、医療費の無料化を掲げるが、最低120億ユーロが必要。さらにEU諸国に融資を乞う?
 ところで青年時代に共産主義者だったチプラス新首相は、奥さんと15歳で知り合い、ギリシャ正教徒が9割を占める国で結婚式も挙げずに同棲生活25年、二人の娘も洗礼を受けていない。無神論者の新しいタイプの政治家だ。オランド大統領も同級生だったロワイヤル現エコロジー相と結婚せずに4人の子供を設けたし、いまではファーストレディーなしの元首として、訪問する国でもヘンとも思われない。多くの国が同性婚を認めたように、政治家の私生活も変化しつつある。
 ギリシャが火ぶたを切った「欧州の春」をオランド大統領が他のEU国首脳以上に重視し、庶民の声を反映したEU建設への腕の見せどころ。(君)