日本だったら、寒い冬にはちり鍋やすき焼きなど鍋ものが一番、ということになるけれど、フランスには、皆でテーブルを囲み、作りながらわいわいつっつくという料理がほとんどない。
鍋料理らしいフランス料理といえばフォンデュだろう。ブルゴーニュ風と呼ばれるフォンデュは鍋に油を入れて熱くし、コロコロッと一口大に切ったランプなどの牛肉を、長いフォークに刺して油に入れ、食べごろに火が通ったら取り出して、さまざまなソースに付けて食べるというもの。肉好きのフランスならではのごちそうだ。サヴォワ風フォンデュは、コンテやボーフォールなどのチーズを細かく切って、ニンニクをこすりつけておいた鍋に入れ、白ワインを注いで混ぜ合わせてとろとろにしたものに、ナイフで刺したパン切れを入れて、チーズをからめて食べる。これはスキー場のレストランなどで人気だ。
そしてラクレット。これも専用の道具にラクレットと呼ばれるチーズを塊のまま取り付け、火にかざしては溶けたチーズを、ハムや生ハム、あるいは、ほかほかのゆでジャガにかけて食べていく。最近は、このラクレットを気軽に食べられる道具が、どこの家庭にも1台は置いてあるようになった。小さく切り分けて市販されているラクレットチーズを、電熱で溶かしながら、ハム類にかけて味わうというもの。「あっ、やっと溶けた!」など子供たちの歓声があがって、冬の食卓が明るくなる。サラダなどの野菜を忘れないように。(真)