ドン・ジュアンは何におびえているのだろう

Dom Juan ou le Festin de pierre

 その名を聞けば多くの人がプレイボーイをイメージする、スペイン生まれの伝説上の放蕩児ドン・ファンは、イタリア語ではドン・ジョヴァンニ、フランス語ではドン・ジュアンと呼ばれ、モーツァルトが書いたオペラしかり、このモリエールが書いた戯曲もしかり、作家たちにインスピレーションを与えてきた。初演は1665年だが、15回上演された後、モリエールの生前中に再演されることはなくお蔵入り、2世紀近くを経た19世紀半ばに再び公演が始まっている。コメディ・フランセーズでも上演は10年ぶり、ジャン=ピエール・ヴァンサンの新しい演出で、配役など全体的に若返った印象を受ける。
 ロイック・コルベリーのドン・ジュアンは、若々しく軽やか、無頓着で奔放、出会う人々、特に女性を魅了したい、という欲望と自己愛を見事に体現している。そのドン・ジュアンに仕える家来スガナレル(圧倒的な存在感のセルジュ・バグダサリアン)は、主人の放蕩さに呆れ、嘆きはしても決してとがめず、時には主人を煽るようでもあり、珍道中の間、二人は息の合ったコンビを組み、道化を演じつつ観客の笑いを誘う。
 夫のあまりの身勝手さに「改悛(かいしゅん)しなければ神に仕える」とドン・ジュアンを諭そうとする妻、エルヴィールの真剣な眼差しにハッと顔をこわばらせたかと思えばすぐにおどけてしまうドン・ジュアンだが、­その目は笑っていない。彼は何におびえているのだろう。一人の女性に忠実でいること、父親が望むようなまっとうな生活を送ること、社会に順応することなのか…。 忠実な家来スガナレルはモリエールの化身だという。ドン・ジュアンはおそらくモリエール自身も憧れたにちがいない自由の化身だったのだろう、とふと思った。(海) 12/16日迄。6€-41€

Comédie Française Salle Richelieu :
1 place Colette 1er 08.2510.1680
http://www.comedie-francaise.fr/


 

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