フランスでも火葬が増えている。

以前の火葬炉のエントツ。
以前の火葬炉のエントツ。
火葬を望むフランス人
 遺体は墓地に埋葬inhumationされるのが普通だったが、1963年に教会が火葬を認めて以来、火葬の場合は、葬儀ミサの後、棺を火葬場に送るようになった。
 カトリック国のフランス人のなかで最近、自ら火葬を希望する人が増えている。フランス語で火葬はクレマシオンcrémationと言い、アンシネラシオンincinérationと言う人もいるが、後者は廃品焼却も意味し、あまり品がよくない。
 フランス人の火葬希望の理由として、人類学者ウルバン教授(ル・モンド紙2013-11-3)によれば、現代の若い人たちは、棺の中で遺体が腐敗していく状態を想像するのを嫌い、むしろ炎(900度以上)による遺体の浄化を願う傾向にあるという。また高齢化とともに認知症やアルツハイマー患者も増えているなかで、生前中に世話になった人も記憶から消え、思い出を継承してくれる次世代もいない者にとって、死ぬときは遺族に迷惑をかけたくない、最期は自分だけと考え、献体希望者も増えつつあるのを、現代人の「超個人主義」と分析する。
 最近は約30 %、都市圏では50%以上(子供が死亡した場合は遺族の30%)が火葬を希望するという。しかし75%のフランス人、77%の遺族は、火葬の場合でも教会での葬儀ミサを希望する。火葬場での遺族・友人らの立ち合いだけでは、死者の霊を弔う気持ちを死後の想いに昇華することが難しいからなのか。日本なら遺骨は49日目に土に戻り、仏様になるという仏教思想が遺族を支えてくれるのだろう。
 しかし現実的には、遺族にとって火葬の方が埋葬より費用がかからないのと、遠地や外国で暮らす遺族にとって墓の世話も難しくなっているからだろう。年間にわたって、墓地の清掃や献花を受け持つ代理サービス業Service d’entretiens des tombesも存在する。
 火葬を希望する人は、生前中に遺言でなくても自筆のメモみたいなものを用意しておくか、家族の誰かに意志を伝えておく必要がある。今日、フランスには本土の95県に火葬炉のある葬儀場が存在する。ペール・ラシェーズには10基の火葬炉があり、1日平均25遺体の火葬に当たっている。

 

葬儀費用
 火葬費は成人534ユーロ、子供(1〜12歳)267ユーロ、1歳未満181ユーロ。葬儀屋(Entreprises de Pompes funèbres)に役所への書類から全てを任せることができ、葬儀費用は3千ユーロから5千ユーロ。生前から月々数ユーロの保険をかけることができる葬儀保険Assurance Obsèquesもある。棺は、マツ材の500ユーロ位から最高級のマホガニー製(埋葬用)8千ユーロまで選り取り見取り。
 余談だが、火葬で煙になってしまう棺に金をかけるよりは、そして地球の温暖化にくみするよりは、英国製カートン製の棺なら約200ユーロと、エコロジー派の友人はすすめるが、ペール・ラシェーズではカートン製はまだ受け付けない。
遺族や友人たちが故人を偲(しの)べるクーポール。
遺族や友人たちが故人を偲(しの)べるクーポール。

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