
ヴァレリー・トリエヴェレール、オランド大統領前パートナーの暴露本『Merci pour ce moment(これまでのことありがとう)』が9月4日に20 万部発売され、1週間で16万部余が飛ぶように売れた。大統領の私生活の覗(のぞ)き見的で、顕示的な本は数カ月で50万部は売れそう。
2013年11月にも彼が「結婚しよう」と言っていた矢先、1月上旬にスキャンダル誌クローザーが表紙にスクーターで来たオランドが俳優ジュリア・ガイエのアパルトマンから出てくるシーンを掲載し、彼女が怒り狂うところから文章は始まる。彼女はショックのあまり睡眠薬を大量に呑み入院、意識もうろう状態で数日ヴェルサイユのランテルヌ館で静養。1月下旬、大統領は私生活の破綻が政治に影響を与える前にと、自らAFP通信社に彼女との離別宣言を公表したことが彼女には最大の屈辱となる。18カ月間のエリゼ宮での大統領との「内縁」生活は大統領夫人でないことへの劣等感を植えつける。マンデラの葬儀に彼女が出席することをオランドがしぶったことも屈辱のしこりに。
彼女は、80年代初期パリ・マッチに雇われ、報道記者になる。オランドの事実婚パートナー、セゴレーヌ・ロワイヤルは、ミッテラン政権で家庭問題相になるが、カップルで大臣にはなれず、オランドは社会党第一書記になる。この頃からヴァレリーはカフェなどで彼から政界裏話の聞き役になる。セゴレーヌが4人目を出産(ヴァレリーが取材)した年に、彼女も2 人目の夫トリエヴェレール氏の2人目の子を産み計3人の母親に。ヴァレリーとオランドは密会を重ね、大統領になる前の9年間、15区のアパートでバラ色の同棲生活…オランドの不倫に怒ったセゴレーヌが押し掛ける場面も描かれ、08年大統領選に破れたロワイヤルは正式に彼と離別。
自分の子供4人の母親かつ優秀な社会党政治家としてオランドと切っても切れないロワイヤルを、2013年ラロシェル市長選でオランドが支援したことで、嫉妬の塊となったヴァレリーがロワイヤルのライバルに支援ツイッターを送ったことが二人の関係の大きなひびに。「メシャント」で「ヒステリック」なヴァレリーが白日に。
ヴァレリーは貧困家族の出でありガイエのように城持ちでないことを強調。オランドを実家に招いたときの彼の冗談の一言「Vous n’êtes pas jojo」(あんたらみっともないね)で彼女の家族を貧乏人扱いしたとし、「オランドは金持ちが好きで貧乏人嫌い」と大統領を攻撃する。9月5日、大統領は英国でのNATO会談の記者会見で「自分は貧困者のために闘ってきた。それが存在理由だ」と彼女の暴言を打ち消すのに懸命。
大統領は、秒読みの他国の元首や政治家との会談、EU 首脳会議、国連演説、昨年、内戦状態のマリや中央アフリカに飛び、駐留の仏兵を励まし、ロシア経済制裁やイラク問題を米大統領や英独首相と電話で話し合い、国民からは失業・緊縮財政を非難され、支持率13%と気が気でない。寝室でセゴレーヌやガイエとの関係を言い訳したり、ヴァレリーの人道活動について聞く暇もない。「冷酷」「無関心」「嘘つき」…と「模範的大統領」になれない彼への恨みを書き連ね、復讐(ふくしゅう)「大統領殺し」が完結。(君)

Ed. les arènes 320 pages, 20€
