“本物” で自分を演じ直している。

 5月のカンヌ国際映画祭で話題になったフランス新人監督の作品が続々と公開中だ。その中の1本『Party Girl』は、”ある視点”部門のオープニングを飾り、映画祭全部門に出品された処女作の中から選ばれる”カメラドール賞”も獲得している。
 ドイツと国境を接する北の町でキャバレーのホステスとして人生を送ってきたアンジェリックは60歳になる。夜な夜な飲んで歌って踊って…そんな夜の商売が彼女は嫌いじゃない。そろそろ引き際?と思いつつも夜になると化粧してキャバレーに立つ自分がいる。彼女を指名する常連客もめっきり減ったなかで、ふと優しいジョゼフのことを思い出し彼を訪ねてみると、彼は真剣に彼女と結婚してもよいと言い出す。躊躇(ちゅうちょ)するアンジェリックを暖かく包み込むジョゼフ。ついに結婚を決心した彼女は子どもたち、5人の異父兄弟に報告する。
 末娘のシンシアは里子に出されているが、これを機に母娘の関係を取り戻す。しかし、こうして家族や同僚から祝福されて挙げた結婚式の夜、アンジェリックは……。
 この映画はアンジェリックという一人の女性のポートレートであり、同時に彼女を活写するうちに見えてくるある社会の、そしてそこに生きる人々のポートレートでもある。マリー・アマシュークリ、クレール・ビュルジェ、サミュエル・テイ、3人の共同監督作たが、アンジェリックはサミュエル・テイの実母であり、彼女の実話がベースになっている。登場人物も全員 “本物” で自分を演じ直しているのだ。ドキュメンタリーのようなフィクション、フィクションのようなドキュメンタリー、再構築された実像である。(吉)

『Party Girl 』