電子タバコがまたまた話題になっている。というのも、トゥールーズのタバコ販売店が、隣にできた電子タバコ販売店を、電子タバコで吐き出される蒸気も「煙」であるから、公正で自由な競争に反するものだとして告訴し、10月28日から商事裁判所で裁判が始まったからだ。
電子タバコは、煙のかわりに少量の蒸気を吸引する、タバコを模した吸引器。カートリッジあるいは詰め替え用の液体は、ニコチン含有量によって数種類用意され、ニコチンを含まないものもある。だが、一般的なタバコとは異なり、タバコの葉や紙の燃焼に伴うタールや一酸化炭素などが発生しないし、タバコの先端から副流煙も出ないので、利用者の健康への害もごく少ないし、周囲の人たちにも迷惑をかけないので、フランスでも愛好者が急増中。現在約100万人が愛用しているという。紙タバコや葉巻、各種フルーツのフレーバーが用意されているのも人気の理由だろう。
オヴニーの前々号で触れたように、欧州議会は10月8日、電子タバコは医薬品と同じ規制を受けるべきという欧州委員会が作成した法案を、禁煙のための手段といった医学的効果が明らかでないとして退け、現状通り自由に販売されるべきとしている(広告や未成年への販売は禁止)。
フランスでは、タバコ販売店や薬局などの圧力団体が、電子タバコによる莫大な利益を自分たちのものにしようと各政党に働きかけている。また電子タバコは少量でもニコチンを含んでいるのだから、仕事場やカフェでの使用を禁止すべきだ、という声も強い。禁煙効果についても賛否両論だが、電子タバコを吸うようになってから、タバコの本数が激減したという人がかなりいることは事実だ。
こうした動きに対し、疫学専門家のアントワーヌ・ファルオー教授は「電子タバコの自由販売は、タバコ喫煙者の2人に1人が早死にしているというおそろしい真実と闘うための有効な手段である(…)電子タバコが100%安全であるかどうかは問題ではない。電子タバコは発ガン物質を含んでいるかもしれないが、そのリスクは、タバコと比べたらほとんど取るに足らないものだ」と主張する。同教授によれば、タバコの主な害は、喫煙することからくるタールや一酸化炭素にあり、ニコチンを少量摂取することは大きな問題ではないとまで言い切る。
前述の欧州委員会作成の法案は、欧州議会と欧州委員会の間で年末までに妥協案が作成され、欧州議会で最終成立する予定だが、行方を見守りたい。(真)