ベジタリアンと聞くと、肉も魚も食べる者にはなんとも味気ない料理の印象があった。そう、この店を知るまでは。
一見その辺の中華と変わらない外観に「ベジタリアン」の表記。ところがメニューを見ると、牛だの鶏だの書いてある。いぶかしく思いつつも、そもそもベジタリアンではないのであまり気にもせず、おすすめらしいマレーシアのSoupe Laksa (7.5€)、連れは鶏の煮込みのMarmite au poulet caramélisé (8€)、そしてRiz gluant sauté (6€)を二人で分けた。酸味とコクのバランスが良いスープはエキゾチックなのにどこか懐かしく和む味。見た目も味も魚のすり身と思われるものが入っている。濃厚な味付けの煮込みもまた、どう考えても鶏肉の食感だ。もち米の焼き飯はまさにおこわ炒飯でチャーシューの旨味を感じる。「魚も鶏も入ってないよ。味付けにも使ってない。君が食べた、魚や肉に見えたものは全部、大豆プロテインで作られているんだよ」とマレーシア人のシェフ。あれが? 大豆? 衝撃の瞬間だった。
その後も友人を連れて食べに行ったが、誰もが「カモの味だ」「ハムだよ、これ」とキツネにつままれたように驚き、「これだけの味を出せるってすごい。とにかく美味しい」と満足する。
ベジタリアンでもそうでなくても、美味しく楽しめる唯一無二の店だ。(み)
〈アジア・ベジタリアン〉Tien Hiang
Adresse : 14 rue Bichat, 75010 parisTEL : 01.4200.0823
12h-15h/18h30-23h。火休。 - 日曜営業 - 祝日営業 - 22時以降営業