往年のシャンソン歌手レオ・マルジャンヌは、8月26日に101歳の誕生日を迎える。この1年間、20歳も若く見える彼女の元気な姿がTVのニュースで度々報道されていた。
彼女が創唱した『Seul ce soir 今宵ただひとり』は、第2次世界大戦中、ナチス占領下のパリでラジオから毎日のように流れていた感傷的な歌で、トリュフォー監督による1980年の『終電車』の挿入歌にも使われ、戦争を経験したフランス人の心に深く刻まれた不滅のシャンソンだ。太い首とがっしりした体。鋼鉄のような胸から吐き出す張りのある熱っぽい声と彼女独特のほろ苦みのある魅惑的な声を使い分け、最初のヒット曲『月光のチャペル』ほか、『九月の雨』、『ビギン・ザ・ビギン』、『素敵なあなた』など、1930年代の仏シャンソン界に、アメリカのジャズのスタンダード・ナンバーを数多く紹介している。
戦後は対独協力の嫌疑がかけられ、しばらく舞台で歌うことができなかったが、彼女こそ、占領下のパリを象徴する代表的歌手の一人であった。(南)