
傘売りのおじさんで溢れた昨年に続き、今年も天候には恵まれなかったカンヌ映画祭。先輩ライターの言葉を信じれば、こんな悪天候は昨年をのぞけば1986年以来。だが悪天候でも、華やかさを忘れないのがカンヌである。今年の審査委員長は「カンヌと同じ66歳」のスティーブン・スピルバーグ。数年越しのラブコールを受け、満を持しての参加だ。オープニング作品はレオナルド・ディカプリオ主演の『華麗なるギャツビー』。監督は1992年に『ダンシング・ヒーロー』を〈ある視点〉部門に出品して以来、出世街道をひた走るバズ・ラーマンだ。
コンペティション部門は「監督の若返り化」が際立った。コンペ作20本のうち、中心世代が60年代生まれ(11人)と70年代(5人)生まれ。ロマン・ポランスキーだけが79歳と堂々の貫禄。今のところジャ・ジャンクー、アスガー・ファルハディ、アレックス・ファン・ヴァーメルダム、パオロ・ソレンティーノなどの作品が評価が高く、是枝裕和監督の『そして父になる』も公式上映ではスタンディングオベーションが止まず、主演の福山雅治の「男泣き」が話題に。三池崇史監督の『藁(わら)の楯』は、エンターテインメントに徹したB級快作だが、芸術志向が強いコンペ向き作品ではないためか海外のジャーナリストからは厳しい評価も。ただそんな事態も、海千山千の監督にとっては「想定内」だろう。
カンヌ映画祭は基本的に業界人向けで、一般客に映画チケットを販売しない数少ない映画祭のひとつ。とはいえ一昨年からオープニング作品はフランスの一般の劇場でも同日公開するようになったし、コンペ作品の『Le Passé』や『Only God forgives』だってすでに劇場公開中。今やふつうの映画ファンも気軽にカンヌ気分を味わえるといえよう。また映画祭直後に、批評家週間はシネマテークで、監督週間はフォーラム・デジマージュで恒例の再上映があるので、パリ在住者はお見逃しなく。(瑞)
