同性婚法が上院を通過(4/12)、国民議会の再審議(4/23)で賛成331/反対225で成立した。同法には同性カップルの養子縁組も含まれており、保守反対派は「子供には父と母が必要」と、子供が二人のパパ、ママに育てられることはカトリック教徒としても人類学的にも許せず「人類の本来の生殖・倫理の終焉!」と叫ぶ。野党は憲法評議会に同法の合憲性を問うため提訴したが、民主主義に則って両議会で成立した法律に憲法評議会が横車を押すとは思えない。
同性婚と彼らの養子縁組を認めるフランスは欧州(南ア、イスラエル含む)で14番目。カナダ、米、メキシコ、ブラジル、オーストラリアは一部の州が認める。1998年に同性にも認めるパクス(連帯民事協約)が成立。減りつつある結婚件数とは逆にパクスが増えているのは、かなりの20〜40歳世代が親の離婚劇にこりているからだろう。
同性同士のパクス協約者は約10万組(全体の0.6%)。すでに2万5千〜4万人の子供が同性カップル家庭で暮らしている。昨年11月のIFOP統計によると、1986年に同性愛を認めた市民は54 %でしかなかったが、2012年には87%が「性のあり方の相違」を認めている。最近の調査では66%が同性婚を、47%が彼らの養子縁組に賛成している。
昨年以来、極右FN党に近い活動家フリジッド・バルジョ(実名ヴィルジニ・テランヌ、51歳)は、50年代ワンピース姿で良き時代を演出し、「万人の結婚Mariage pour tous」をもじって「万人のデモ Manifs pour tous」(37団体)を率いる。「父母と子供」をスローガンにブルー(男の子)とピンク(女の子)の旗を掲げ、ブタン保守議員が「市民戦争!」と叫べば、彼女はオランド大統領に向かって「独裁者!」「血の対決!」と息まく。
3月に「万人のデモ」から離れ、「アラブの春」をまねた「フランスの春」(カトリック系79団体)の先頭に立つのはベアトリス・ブルジュ(52歳)。全国でカトリック・右翼系過激派がくり広げる蜂起を左派政権に敵対する運動「フランスの春」とみなし、上院、国民議会前のテントのシットインから、同法を支持する政治家への嫌がらせや脅し、シャンゼリゼでスキンヘッドも混じる官憲との衝突(67人逮捕)、マレ地区にあるホモ・レズ協会本部の襲撃…と過激な行動を見せている。この勢いにのり、パリ、リヨン、ボルドーなどでゲイ青年に対する同性愛者排斥者の暴力事件が続出。
金髪、細面のベアトリス・ブルジュは昨年総選挙でヴェルサイユから出馬している。カトリック系団体「子どものため」の代表でもあり「性の選択は人類への侵害、文明の破壊」と嘆く。ヴァン=トロワ・パリ枢機卿も「同性婚は性のアイデンティティを隠蔽(いんぺい)する」と警告する。
カトリック精神に目覚め、同性婚という重大な社会変革に反発する保守派青年らの蜂起は「68年5月革命」に匹敵するオランド政権への敵対運動ともみられる。5月5 日のデモはパリで1万5千(警察側)〜3万5千人(主催者側)を動員、26日にも予定している。同性家庭に反対する保守派フランス人の立ち上がりはこの国が二つに分かれていることを示している。若い世代を含む反対派の余熱が2014年地方選挙で再燃しそうだ。(君)