見学者の楽しみの一つは、味見、味見、味見…
フランスのスーパーやデパートは、日本にくらべ、試食dégustationが少なめでさびしい。だが悲しむなかれ、フランスには、味見天国といってよい国際農業見本市があるのだから。ちょっと混み過ぎの感はあるけれど、ここは最高の試食、試飲が、それも効率的に体験できる、食いしん坊には夢のような場所でもある。まだまだ味わったことのないフランスのおいしいものを発掘したい人は、パビリオン7に足を運ぶことにしよう。
味見をすることに遠慮はいらない。生産者にとっても、見本市に参加する大きなモチベーションは、消費者との直接の出会いにあるのだという。和やかな雰囲気の中で実際に味見をしてもらい、商品にかける情熱と、その商品の価値を直接伝えることを狙っているとのこと。この農業見本市は、生産者と消費者をつなぐ大事なコミュニケーションの場として機能していることになる。
さまざまなチーズやワイン、フォアグラ、ハチミツ、エスプレット産唐辛子、オリーブオイル、モルトーソーセージ…。会場には思いつく限りのフランスの特産品が勢揃いしているといってよい。地方色が豊かで、フランス全土の味覚と文化に触れられる機会としても貴重だ。食糧自給率が100%を超えるというフランスの底力を見せつけられる。
パビリオン7.1には、昨年のCGAでメダルを獲得した名産品を集めたブティックがあるのも見逃せない。またパビリオン5には、世界の味覚を集めたコーナーもあるので、味の世界旅行を楽しみたいという人は、是非のぞいてみよう。
会場はおいしそうなものに溢れており、思わずうれしい悲鳴が上がる。だからついつい買い過ぎて、両手がふさがってしまうかもしれない。そんなおそれがある人は、パビリオン7.2に無料の手荷物預かり所があることを覚えておくと便利だ。(瑞)
中央山地カンタル県のスタンドでは名物アリゴの実演と味見。
カンタルチーズがたっぷり入ったマッシュポテトが、よくねばること!
大統領も愛する国際農業見本市。
初めてこの見本市の開幕のテープを切った大統領は、ジャック・シラク氏だった。シラク元大統領は、農業に携わる人たちと親しく会話するコツを心得ていて、スタンド一つ一つに立ち止まっては、ワインをおいしそうに味わい、生ハムやソーシソンをぺろりと平らげ、見学者と関係者の盛大な拍手を浴びた。このシラク氏、大統領の座を下りてから5年経った昨年の見本市にも姿を現している。
それ以来、農業が経済の主要なバネになっているフランスを率いる大統領にとって、毎年この見本市を訪れ、「国民に近い」ことを示すのが恒例行事になった。2008年サルコジ前大統領は、この見本市で彼の握手を拒んだ見学者に「消え失せろ、バカ野郎」と叫んで、ひんしゅくを買ったこともあるが。
昨年の見本市は、大統領選を間近にした社会党のオランド候補に注目が集まった。「毎年来ているが、今回は状況が違うから」と、朝7時から夕方7時近くまでなんと12時間、見本市を行ったり来たり。牛にブラシをかけてやったり、「まだ私がダイエットをしてるなんて思ったら大間違いだ」と繰り返しながら、チーズや生ハムの味見に余念がなかった。(真)
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