タラ科の魚をおろしてくん製にしたアドックhaddockが、美しいオレンジ色の身を見せながら魚屋に並んでいる。1枚がだいたい300グラムから500グラムくらいの重さになるだろう。合わせて500グラム買ってきて、久しぶりに、英国料理の、ケジャリーと呼ばれるカレー風味のごはんを作ってみよう。19世紀のビクトリア朝時代、イギリス人が朝食として好んだものだという。イギリス人の友だちが作るものは、カレーといってもあまり辛くないので、ちょっとがっかりする。といっても、辛すぎるとアドックの繊細なうま味が飛んでしまう。このへんの加減がなかなかむずかしい。
お米を洗ってザルにあけ、水気をしっかり切っておく。アドックは、底広の鍋に重ならないように並べ、それがすっかりかぶるように熱湯を注ぎ、弱火にかける。沸騰させないようにしながら、アドックの厚さ次第だが、15分ほど火を通したら取り出す。皮をむき、大きめにほぐしながら残っている骨を丁寧にとりのぞく。ゆでエビは頭を残して殻をむいておく。卵も10分ほどゆでてから殻をむいておく。タマネギは細かくみじん切り。
ココット鍋にオリーブ油をたっぷりとり、まずタマネギを炒める。軽く焼き色がついてきたところで米を入れてさらに炒めていき、米が透明になったら、カレーのパウダーなりペーストを、今回は英国風に控えめに入れてみよう。カレーのいい香りが立ったら、アドックをゆでたあとの煮汁をごはんの水加減で注ぐ。よく混ぜ合わせ、塩味を調える。沸騰してきたら火をできるだけ落とし、フタをして炊いていく。
炊きあがったら、ほぐしておいたアドックの身とエビを入れ、もう一度フタをしてさらに5分ほどむらす。ゆで上げておいたグリーンピースなどを加えれば、彩りがきれいになる。バターを加え、全体を大きく混ぜ合わせたら、最後に、四つ割りにしたゆで卵を飾り、きざんだパセリを散らせばできあがり。辛い方が好きな人には、ライムなどの辛いチャツネを添える。飲み物はビールがよく合う 。(真)
アドック500g、ゆでエビ300グラム、米400g、タマネギ2個、卵3個、カレー粉あるいはカレーペースト大さじ1杯、
バター大さじ3杯、パセリ半束、オリーブ油、塩
●haddock
英語の「haddock ハドック」は、北海産スケソウダラéglefinのことだが、フランスでは「アドック」と発音され、このスケソウダラをくん製にしたものを指す。美しいオレンジ色のおろし身が、ほとんどの魚屋で見かけられる。このオレンジ色は、くん製の色ではなく、ベニノキの実rocouからとられた色素によるものだ。
冷蔵庫に入れておけば4、5日は大丈夫なので、便利な食材。ワインバーなどでも人気で、皮をはいでから、そのまま薄く切って、生クリームを添えてそのままおつまみとして出したりする。あるいは小さくさいの目に切ってから、同じくさいの目に切ったリンゴやピーマンと混ぜ合せ、みじん切りにしたシブレットやショウガも混ぜ入れれば、素敵なタルタル。ソースはマヨネーズやフロマージュ・ブランをベースにしたものが合う。
火を通してから使う時は、塩がきついようなら、1時間ほど牛乳に漬けた方がいい。でも最近は塩が薄いことが多いので、今回のレシピのように15分くらい煮ると、自然と塩出しができてしまう。皮をはぎ、骨をとって、身をほぐしたら、レンズ豆のサラダに入れてもうまい。ゆでて輪切りにしたジャガイモに混ぜ入れてグラタンも悪くない。パスタに入れるのもおすすめ、と、万能的な食材です。和風なら雑炊がうまい。
●pâte de curry
カレー粉もいいが、カレーペーストを使った方が、ハーブやスパイスの香りがよくきいて風味がさらによくなるようだ。かなり辛いので、ボクは〈mild〉と表記された瓶詰めを買ってくるが、それでも中辛以上だ。初めて使う時は、大さじ1杯から2杯と、ほどほどに加えたい。タイ製のものもあるが、これも辛い! ココナツミルクを加えてまろやかにしたい。
●chutney
インド食材店に行くと、同じような瓶に入ったチャツネを売っている。かなり辛いライムのチャツネから、甘みがかったマンゴーのチャツネまで、種類が豊富。これも少なくとも2種類揃えておくと、重宝する。カレーや揚げ物に添えるだけでなく、マンゴーチャツネなどは、カレーに直接加えるとうま味が増す。