アメリカ人写真家で、ニューヨークで画廊を経営するハワード・グリーンバーグは、写真のコレクターでもある。彼の未公開の個人コレクションから本人が選んだ作品を展示したのがこの展覧会だ。
散逸したコレクションの再現は別として、コレクションの展覧会は一カ所からまとめて借りてくればよいので、安易な企画が多い。この展覧会もあまり期待していなかったが、行ってびっくり。コレクターの鑑識眼は超一流だ。国立図書館で「ベスト100」と銘打った写真展を開催しているが、むしろこの展覧会にそのタイトルを捧げたい。
グリーンバーグは1970年に写真を始め、アーティストのコミュニティがあるニューヨーク州ウッドストックに移住してフリーの写真家になった。非営利で教育目的の写真センターを設立し、写真ギャラリーも作った。ギャラリーは1986年にニューヨーク市に移転し、現在はソーホーにある
会場には、パリの美術館の作家の回顧展で展示された写真も多いが、そこで見たときとは印象が違う。展覧会全体からコレクターの価値観が感じられるからだ。ストリート写真を撮った
ウィージーは、カルチエ=ブレッソン財団での個展では、暗くセンセーショナルなイメージだったが、アパートのテラスで数人の子どもが折り重なって寝ている写真には、乾いた現実の中での人間の悲哀が漂っており、こんな写真もあったのかと作家を再発見した思いだ。
グリーンバーグは、ベトナム戦争当時の反戦世代。ベトコンの将校が同じベトナム人に射殺される寸前の場面を撮ったエディ・アダムスの作品、深いしわが刻まれた若い母親の移民を撮ったドロテア・ランジの作品など社会的な写真の傑作も多い。
大学で心理学を学んだグリーンバーグは「人に興味がある」と言う。イタリアの路上で、おしゃれをしたアメリカ人女性が大勢の男たちから好奇の視線を浴びるルース・オーキンの写真には、人間の欲望や虚栄が表れている。
2011年グランパレでのスタイン家のコレクション展に次ぎ、久々にコレクションものの良い展覧会。どんな写真を撮るのか、本人の作品も見たくなった。(羽)
Fondation Henri Cartier-Bresson (HCB) :
2 impasse Lebouis 14e 4月28日迄。月祝休。
画像:Ruth Orkin, Jeune femme américaine en Italie, 1951©Ruth Orkin/
Courtesy Howard Greenberg Gallery