ジョルジュ・サンドの食卓から 11

 旅をこよなく愛したジョルジュ・サンドには、その思い出から生まれた小説も多い。1833年12月、サンドは新しい恋人である詩人のアルフレッド・ド・ミュッセとイタリアに出かける。そして、この年の暮れから翌年8月までの間を水の都ヴェネチアで過ごした。
 『モザイク職人たち』(1838年) の舞台は、ヴェネチアのサンマルコ寺院。主人公は、モザイク職人のズッカート兄弟だ。ふたりとも才気あふれる青年だが、真面目で繊細、病弱な長男のフランチェスコに対して、「ヴェネチア一の美男」と誉れ高い弟のヴァレリオは、とにかく陽気で、にぎやか。ワインに目がなくて、「僕は、たとえ仕事を失ったり、元老院の不興を買ったとしても、スキロス産のワインが2本もあればそれでなぐさめられる」など、何かの例えにいつもワインを引き合いに出す。父親から「脳みそがない」などと陰口をたたかれているけれど、困難な仕事に追われている時でも楽しむことを忘れないのはもちろんのこと、職人仲間にもその気持ちを波及させる意気のよさが気持ちいい。「ヴァレリオの不変の快活さ、面白い話、熱狂的な歌声、そして皆で回し飲みするキプロスのワインの大きな壺。これらのおかげで、一同は素晴らしい熱意を維持したのだった」。こんなくだりからは、スタンダールほどではないにしても、サンドのイタリアに対する熱い思いがほとばしるよう。
 この小説を書いてから約20年後、サンドは再びイタリアを訪れた。美しい風景を前に画家の息子と版画家の恋人がクロッキーにいそしむ間、サンドはノートをとる。そして、アレクサンドル・デュマの初めの妻であったイダ・フェリエ宅に食事に招かれたり、当時有名だったトラットリアの料理女を雇ったりして、イタリア料理を思う存分味わった。この一行、カッシーナ公園のジェラート屋がお気に入りで、雨の日にも足しげく通ったという。(さ)

 

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