長回しならではの映画体験。 『魚影の群れ』ほか、相米慎二特集。

相米慎二監督。
相米慎二監督。
 12月12日からパリのシネマテークで始まる相米慎二監督全14作一挙上映、必見!
 日本では『翔んだカップル』(’80)や『セーラー服と機関銃』(’81)で一般にも知られた監督だが、フランスでは一昔前に『台風クラブ』(’85)が公開されただけでほとんど知られざる存在。11月 21日から27日にかけて、ナント三大陸映画祭でも特集上映が組まれ人気を集めた。相米は53歳の若さで2001年に他界している。彼が日本の次世代監督に与えた影響は多大だが、没後10年にして昨年12月の東京フィルメックス映画祭を皮切りに、世界的にこの不世出の大監督の発見(再発見)の波動が生まれつつある。彼の映画の特色は「長回し」いわゆる1シーン1カットだが、それが絶大な効果を上げた端的な一例が『魚影の群れ』(’83)のマグロの一本釣りのシーン。えさに食いついた200キロ近い魚をたぐり寄せトドメのもりを打ち込もうとする漁師と、もがく魚の死闘を執拗に撮り続ける。凡庸な監督なら、このシーンは、漁師の形相、糸をたぐり寄せる手のアップ、死にものぐるいの魚、波しぶき、等々をスピード感あふれる編集でつないで迫力を盛り上げたつもりで「どうだ」と胸を張るであろう。しかし相米の長回しの映像は、小細工された映像とは違った迫力で観客を圧倒し映画的なカタルシスをよびおこす。我々はその場に立ち会ってしまったかのような有機的体験ともいえる時間を通過する。この『魚影の群れ』は、今は亡き夏目雅子、緒形拳が素晴らしく実在している。脇の故三遊亭円楽師匠もおつな味。監督の飽くことなき長回しを生き抜いた役者たちの実在感は、観客の胸の奥深くを揺さぶる。たまたまナントで再見したばかりの一例を書いたが、相米映画から受ける体感的映画体験は比類なきもの。日本が生んだ一人の天才的で偉大な映画監督の存在を今みんなで共有したい。(吉)

 

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