ニースで見つけた、庶民の味いろいろ。
食いしん坊のニースの旅は、まずは朝市からスタート。ズッキーニの黄色い花や、真っ赤なトマトの山に目を見張る。でも、第一の目的は何といっても、この地でしか買えない生産者直売のオリーブオイル。この地でとれる「カイエット」という小粒のオリーブは、フルーティでマイルドな良質なオイルの原料になる。有名店〈Alziali〉のものも確かに良い風味だけれど、ニースのマルシェには、自分でつくったオリーブオイルを売っているようなおじいちゃんがいて、思わず応援したくなってしまう。地元民は、マルシェに出品している生産者の中にもお気に入りがいて、決まってそこで購入する。中には、自分の家の庭でとれたオリーブの実を業者に持ち込み、自家製オイルを堪能するような幸せ者もいるとか! ニース風サラダをサンドイッチにしてしまった「パン・バーニャ」にも、オリーブオイルが惜しみなくかかっているのがうれしい。
こうなると、町のシックな地区にある大好きなマチス美術館に行っても、その庭の前のオリーブ林ではどれほど実が収穫できるのか、なんてことが気になってくる。林を抜けたところ、美術館隣にある公園が〈Jardin du Monastère de Cimiez〉。修道院の面影を残したひっそり静かなこの楽園では、南の太陽の恩恵を受けた力強い花と植物が楽しめる。庭の奥までいくと、ニースの町の全景が目に飛び込んでくる。
よく歩いたその夜、ニースっ子に「名物のソッカを食べるならここが一番!」とすすめられて訪ねたのは、港の近くにある庶民的なレストラン〈Chez Pipo〉。小さい店内には、地元の若者やおじさんが肩を並べ、どこか日本の居酒屋のようなリラックス感が漂う。ひよこ豆をベースにしたガレット、ソッカが焼きあがるのを待ちながら、まずは、冷たいロゼで乾杯! オリーブやアンチョビベースのペースト、タマネギと黒オリーブがのっただけのピザなどのシンプルなおつまみが、南仏に来たことを実感させてくれる。待つことしばし、テーブルに運ばれてきたアツアツのソッカ。どこまでも素朴なひよこ豆の生地には絶妙な具合に塩が効いていて、しみじみおいしい。窯焼きならではの香ばしい焼き加減もすばらしく、ニースで一番の評判にも納得です。今でこそ華やかなイメージがあるけれど、ニースはもともと貧しい漁村だった。その昔は、漁師たちがこのガレットを持って仕事に出かけたのだとか。(さ)
有名店〈Alziali〉
パン・バーニャ
マチス美術館
庶民的なレストラン〈Chez Pipo〉