ニースの旧市街は、17、18世紀のバロックの街。
ニースの町には、ベルエポックに北ヨーロッパの貴族、皇族が避寒地として訪れた。それ以前はシャトーのふもとに広がった防壁に囲まれた小さな町だった。華やかなイメージの陰に庶民の生活が今も息づく旧市街 は、ちょっと知られたバロックの街でもある。アパートが連なり入り組んだ路地もよく見ると、玄関の通気孔には年代が記された鉄細工や飾りがあったり、時にははがれた壁も趣深い。
ニソワたち(ニース人)は、昔から信心深いといわれてきた。それを象徴するように点在する教会や礼拝堂はどれも見事なバロック様式。中でもドロワット通りにある17世紀のイエズス会の教会に一歩踏み入れると、彫刻、絵を併せて160体あるという天使たちの優しげな眼差しが見守ってくれている。過剰ともいえる装飾が施され、天と地の世界を分け、また、天上から神の光を取り入れ、劇場的な効果をもたらすという内陣は見ごたえ充分。この地方のバロック教会の見本になったという。
そして、天使といえばニース湾、天使の湾と呼ばれる由来となった少女の名を採ったのがサントレパラット大聖堂。ロセッティ広場に面したこの大聖堂には、パレスチナから小船で流されニースの海岸に天使に導かれてたどり着いたという、15歳の愛らしい聖レパラットの像が奉られている。もう一つ、開いていれば絶対に見たいのはミゼリコルド礼拝堂。バロックの真珠、そのものだ。
貴族の館であったラスカリス宮殿は、外観は案外シンプルだが内部は見ごたえ充分。玄関ホール奥の踊り場付きの大理石の階段では愛の女神アフロディーテが出迎えてくれる。陶器の薬つぼが並んだロココ装飾の昔の薬局も必見。通りの向かいのバルコニーが凝っているのは、宮殿側からの眺めのためとか。その他、裁判所広場に面する18世紀のセソル伯爵の館の玄関装飾も素晴らしい。
旧市街の端、ガリバルディ広場は昔トリノの門があった所。4年前トラムの開通と共に憩いの広場に生まれ変わり、広場を囲む壁の修復も最近完成し、窓枠のだまし絵がより引き立った。中央にはニース出身のガリバルディ像と、その後ろにはサンセピュルクル礼拝堂。広場にはカフェやレストランがテラスを広げている。そのうちの一つCampo Cafféで、生ハムとルッコラのピザを食べながらシャトーの丘を眺めた。(雪)
イエズス会の教会
サントレパラット大聖堂
ミゼリコルド礼拝堂
ラスカリス宮殿
ガリバルディ広場
Campo Caffé