自分と異なる者への差別について、見る人に多くの疑問を投げかける力のこもった展覧会である。元サッカー選手で、自らの名を冠した財団を作って差別をなくす運動を行っているリリアン・テュラム、長年「人間動物園」と植民地主義を研究してきた歴史学者のパスカル・ブランシャール、ケ・ブランリー美術館の歴史資料責任者のナネット・ジャコマイン・スヌプの3人が共同で企画した。
展覧会は、自分と姿かたちが異なる人への好奇心が次第に差別となって、同じ人間として扱わなくなる過程を、絵画、彫刻、ポスター、ビデオを使って年代を追って見せている。
15世紀から18世紀までの大航海時代、アメリカ、太平洋、アフリカ、アジアなどから連れてこられた「珍奇な異人」と、ヨーロッパからも含む「奇形」の人たちが、上流社会でもてはやされた。
19世紀になると、それまでエリートに限られていた異人見聞の機会が「見世物」を通して一般に広まった。「ホッテントット・ヴィーナス」の別名でヨーロッパで裸で見世物にされ、パリで死んだ南アフリカのサールタイ・バートマンはそれを象徴する人物だ。当時のポスターや、2002年にフランスから故郷の南アフリカに遺体が返還され、埋葬された様子のビデオが見られる。
植民地主義時代、人類学者たちが人種に優劣をつけ始め、学問は、植民地主義を正当化する手段となった。植民地から呼ばれた「野蛮人」たちが見せるショーや、彼らを動物園の囲いの中で見せる「人間動物園」が大きな人気を集めた。その多くが呼ぶ側の妄想によって演出されたものだった。
見ていて居心地の悪さを感じつつ、当時の見る側の視線になっていく自分にハッとさせられる。会場の真ん中に、見世物だった異形の人たちを大写しにしたスライドがある。それに魅入る入場者がなんと多いことか。しかし、その後ろには歪んだ鏡があり、スライドを見た後で、自分も異形になることを知らされる。見世物となった人たちの日記がビデオ画面に出て、見られる側の気持ちを知らせるという工夫もなされている。
心の中の差別意識にいつも注意を払っていなければどこで出てくるかわからない。自分の潜在意識を探る旅のような展覧会である。(羽)
写真:”Guillermo Antonio Farini avec ses Earthmen” , Londres, photo de studio
(à l’occasion d’une exhibition au Royal Aquarium),1884 © Pitt Rivers Museum, University of Oxford
(à l’occasion d’une exhibition au Royal Aquarium),1884 © Pitt Rivers Museum, University of Oxford
Musée du quai Branly : 37 quai Branly 7e
6月3日迄。月休。