『マニュフランス』展を見に早めに出かけたい。
2010年11月、ユネスコは、サンテチエンヌ市を「デザインに創造的な都市」に指定した。そのシンボル的存在がCité du design。国の武器工場跡に建設され2009年から一般公開されている。透明感あるマテリアルが多用され、色ガラスから入り込む太陽光が美しい。デザインの新傾向、様々なマテリアルの紹介とその応用、社会的要因とデザインの関係などを探る展覧会、講演会や子供たち相手のアトリエも開かれている。隣接のEcole supérieure d’art et design(美術およびデザイン高等学校)と相まって、Cité du designは、デザイン実験場だ。 来年の3月にはデザイン国際ビエンナーレも開催され、注目を浴びることだろう。
小学生たちに「デザインって?」と聞くとそろって「美しくするため」という答え。エルザさんは、様々な材料と形のスプーンを並べ、使い捨てだったり、手が不自由な人向けだったり…、とそれぞれのデザインがそれぞれの用途から生まれてくることを、わからせていた。
次は美術・産業博物館Musée d’Art et d’Industrieへ。今度の旅のお目当て〈C’était Manufrance, un siècle d’innovations 1885-1985〉展が開催されているのだ。?マニュフランスは1885年創業の、ヨーロッパで最初の通販会社。カタログのメインをなす猟銃と自転車などは、サンテチエンヌ市の広大な工場で生産されていた。最盛期には20万平米の敷地にトータルで5000馬力のエネルギーを使い5000人が働いていたという。1910年のカタログが復刻版で出たが、1000ページにわたってみっしり日用品が並ぶ! この展覧会の核は、やはり猟銃と自転車。ハンターの要求に応えながら改良されていった猟銃が数多く展示されている。猟にまったく縁がないボクにも、銃が美しいオブジェであることはナットクできる。「ツバメ Hirondelle」と呼ばれた一連の自転車もグッドデザイン。1936年、人民戦線内閣が施行した画期的な2週間の有給休暇制が生んだ「消費者の夢」に応えるかのように、二人乗りのタンデム自転車が考案される。ハイキング用のバスケットも付いて、とっても乗り心地がよさそうだ! そして1950年代以降のスター商品だったミシンの数々。このマニュフランスが1985年に倒産し、サンテチエンヌの過疎化が進んでいくことになる。
さあ夜はサンテチエンヌ料理だと張り切ってうろうろしていたら、bouchon forézien(Forezはこの地方の旧名)とうたった〈Bistrot de Vingré〉があった。15.9€のコースの前菜に名物料理Râpéeの名前が見える。といってもおろしたジャガイモにタマネギ、溶き卵を加えて焼いただけのもの。メインはゆでたソーセージ大きなゆでジャガ付きと、働き者たちのおなかをいっぱいにしてくれる素朴な料理だった。ワインはCôte du Forez(1本14€)の赤。ガメー種の赤だと思うけれど、なかなかうまかった。(真)
子供たち相手のアトリエ
猟銃
二人乗りのタンデム自転車
注文品は、こんな木箱で 発送された。ほしい!
これがrâpée。