原初的な感情こそが映画製作を支えた。

●シグロ代表・山上徹二郎さん
 今月のシネマテークは、濃密で心揺さぶる作品を放つ製作会社シグロ特集で幕開け。厳選の24作品は、土本典昭『水俣病その30年』、東陽一『絵の中のぼくの村』、佐藤真『エドワード・サイード』、ジャン・ユンカーマン『老人と海』、橋口亮輔『ぐるりのこと』など、名監督との「信頼関係の結晶」ばかり。環境、人権、福祉、家族、経済と多彩なテーマ設定は、世界を曇りなき目で見るためのヒントがいっぱい。しかもハズレなしの面白さで、どれもまぎれもなく映画、どこまでも映画!  シグロ代表でプロデューサーの山上徹二郎さんに話を伺った。
 「この25年間に私が製作してきた作品は、確かに社会的なテーマのドキュメンタリー映画が多め。しかしその時々に社会的なテーマを取り上げたいと、特別に意識して製作してきたわけではありません。目の前の出来事に強い怒りを感じたり、逆に深い愛情を感じるような時に映画を作ってきたように思います。あるいは愛情と怒りの両方ということも。こうした原初的な感情こそが、私の映画製作を支えてきたと考えています。
 しかし映画はお金を払って見てもらうもので、TV番組とはその点が決定的に違います。映画は本質的にエンターテインメント。映画を見てもらって『ためになりました』とか『勉強になりました』と言われると、何だかとてもがっかり。『面白かった』と言われるのが最高のほめ言葉。もちろん『感動した』という一言もいいですね。
 フランス在住の日本人へ『特にこの作品を見てほしい』という意識はありません。それぞれご自分が気になっておられる作品を、テーマから選んでご覧いただければ幸い。あえて挙げれば監督が違う作品を最低2本は見ていただくか、劇映画とドキュメンタリーをそれぞれ1本ずつは見てもらうかどちらか。シグロという製作会社で括ることのできない作品のギャップを楽しんでもらいたいです」
(聞き手/林瑞絵)
シグロ特集〈Les Productions Siglo〉: 
11月2日から23日まで開催。
Cinémathèque française : 51 rue de Bercy 12e 
『老人と海』 © 1990年シグロ

『老人と海』 © 1990年シグロ