知的で革新的な作風で知られる映画監督、ラウル・ルイス氏が肺感染症のため、8月19日にパリの病院で亡くなった。70歳だった。
1941年チリ南部プエルトモント生まれ。演劇の脚本家を経て、1969年に最初の長編映画、『Tres tristes tigres』を監督した。1973年のピノチェト独裁政権誕生の際にフランスに亡命。自身の亡命体験を下敷きにした『Dialogue d’exilés』(1974)など政治にコミットした映画が多かったが、1990年代以降は幅広い作品を撮った。
代表作は『Trois vies et une seule mort』(1995)、『Généalogies d’un crime』(1997)、『Les âmes fortes』(2001)など。19世紀のポルトガルの貴族をテーマにした大作『Mystères de Lisbonne』(2010)は、その年最高のフランス映画に贈られる『ルイ・ドリュック賞』を受賞した。
南米作家ガルシア・マルケスやホルヘ・ボルヘスなどの影響を受けた文学好きで、『見出された時 Le Temps retrouvé』(1999)や『La Maison Nucingen』(2008)など、プルーストやバルザックの小説を原作にした映画を制作するなど大胆な試みでも知られる。10歳のメルヴィル・プポーを『La Ville des pirates』(1984)に起用し、一流の俳優に育てたことでも有名だ。
70歳とはいえ、ナポレオンのポルトガル征服戦争の映画撮影を準備していた現役の監督だった。彼のプロデューサーだったフランソワ・マルゴラン氏は、ルイス監督は「あらゆる点で現代の偉大な文化人だった」と賛辞を贈った。(し)