トゥールーズ:歴史散歩の後は、ガイヤックで乾杯!
トゥールーズで道に迷ったら、町の北の空に美しくそびえるサンセルナン・バジリカ聖堂を目印にするとよい。スペインへ向かう巡礼者たちを迎え入れるために11世紀に建てられたこの聖堂は、ロマネスク様式としてはヨーロッパ一大きいとされている。毎週土曜の朝には、この聖堂をぐるりと囲むようにのみの市が開かれ、約60並ぶスタンドは地元民や観光客で賑わっている。
トゥールーズの歴史は、町を暖かい色で彩るレンガが教えてくれる。レンガ建築の歴史は古く、ガロ=ロマン時代の全盛期には、この地には33ものレンガの小工場があったという。その後、3世紀ころからは古いレンガが再利用されたり、石灰質の切り石やモルタル、わらや小石が混ざった土までが使われたりした。旧市街を散歩していると、荒壁土や木、レンガからなる〈corondage〉の名残りを確かめることができる。町独特のレンガ造りの建築ができたのは、15世紀に起きた大火事がきっかけ。ちょうどこのころトゥールーズではパステル産業が盛んになり、商人たちは競うようにして豪奢(ごうしゃ)な邸宅をつくった。ガロンヌ川近くにたたずむアセザ館もそのひとつで、レンガはもちろん、他の地方から取り寄せたという貴重な石もふんだんに使ってある。16世紀、「藍(あい)染王」と呼ばれた商人によって建てられたこの邸宅だが、現在は美術館として愛されている。
美術鑑賞を楽しんだ後は、ポン・ヌフを渡って左岸へ。ゆったり流れるガロンヌ川沿いに広がる緑の芝生〈Prairie des Filtres〉は、家族連れや若者であふれるよう。柳の枝がさらさら揺れる音が聞こえる中、昼寝をしたり、新聞を読んだり、みな思い思いに過ごしている。
その夜は、地元の学生イチオシのバーへ。トゥールーズはパリに次いで2番目に学生が多いだけあって、〈Le Comptoir des Carmes〉の店先は若々しい活気にあふれていた。鉄板で焼いたハンバーガーなど、いかにも学生が好きそうな料理にも惹かれたが、私たちはマテ貝やムール貝、ぷりぷりしたイカがたっぷりのっている一品を注文、トゥールーズから遠くないガイヤック産のワインで乾杯した。(さ)