1歳を過ぎたころからテレビの映像に興味を示しだしたので、ここぞとばかりに幼児向けビデオを買いあさった。あれだけ落ち着きのなかった我が子でさえ、
不安になるほど画面にくぎ付けだった。でも世間では頭ごなしに「テレビ,ビデオは絶対にダメ」だといわれていることもあるので、念のため担当医に話したら
「テレビはヌヌー(子守り)じゃない」と一喝されてしまった。
現実はどうなのだろうか。我が子が通う託児所の中級クラス(1歳半〜2歳半)の親
たちにアンケートを取ってみた。すると約6割がなんらかの形で、ビデオや幼児向けテレビ番組をほぼ毎日観ていると返答。しかしそろって条件付きで、例えば
時間は朝夜合わせても最長1時間以内、つけっぱなしはせず、コンテンツを一緒に選び、内容について話しかけるようにしている。その他2割が時々で、残りの
2割は全く見せない(テレビそのものがない)と返答し、その理由として、一方的に流れる映像を無機質に、また大量に取り込むのは言語や感情障害の原因にな
ると思う、とか、そもそも画面は刺激が強く目に悪いなどがあった。
あるママからは悲鳴にも似た返事もあった。「テレビが良くないのは分かってい
る。でも、すでに仕事でくたくたの体にムチ打って、買い物、食事作り、その後で子供をお風呂に入れ、絵本を読み聞かせ、寝かしつけるころには体力の限界。
化粧を落とし寝間着に着替える気力もなく子供より先に夢の世界へ…。子供は可愛いけど、ここまでくると拷問のよう。せめて手が離せない食事の準備中くらい
テレビの力を借りてもよいのでは
?」。深くうなずいてしまった。道を歩いていてもバーチャルな情報に溢れたこんな時代だから、メディアから全く遠ざけるのは不可能に近い。だったら親子の
コミュニケーションツールのひとつとして利用するのも手だろう。しかしそれは、実際に目で見て肌で触れ、匂いや味を感じ、五感をフルに使った実体験があっ
てこそ成り立つのかもしれないが。(凛)