セール会場の行列で、当然イスがないから立っているのに疲れ、ちょっと休もうとしゃがむ姿勢をとったとたん、周りのフランス人の奇妙な視線を集めた。そういえば、しゃがむことは、彼らにとっては不安定で不自然な姿勢。できない人もかなりいる。フランスでは、まだハイハイの赤ん坊のころから靴を履いている。とにかく、一日のうちで靴を履いている時間が長く、室内でも椅子に座る生活だから、まずしゃがむ機会が日常生活の中にない。大人になるころには足首が柔軟性を失い、自分の体重をバランスの配分よく足首にのせられないようだ。和式のトイレが多かったころは、訪日したフランス人のほとんどが苦労したというのもうなずける。
そんな靴習慣のせいだと思うけれど、デブでどんなにおなかが大きくても、フランス人の足首にはあまり脂肪がつかず、体のわりに細い。日本人のように華奢(きゃしゃ)なわけでもないのに、足首はグッと締まっている。フランス人の友人にそのへんを聞いてみた。「足首は細くてあたりまえ。そうやって足を子供のうちから固めておかないと、成長してから締まった美脚にならないよ。足首が細いと体全体が締まって見えるしね。理想体型は足首の細いギリシャ彫刻体型7.5等身!」と答えが返ってきた。子供のころからできるだけ素足で過ごすという日本スタイルは彼らには別世界らしい。マッサージオイルを塗る時も、いちばん体の中心から離れた足首にまずオイルを塗って、身体の中の老廃物を溜め込むゴミ箱(足首)を空にすれば、老廃物がストンと落ちて外に出ていくという仕組みだというのだ。老廃物が出ていくわりには、おなかの脂肪は落ちてないなぁ、と私の目は彼らの足首とおなかを行き来していた。(有)