スノーシュー、聞こえるのは雪を踏みしめる足音だけ。
ラ・クルザは、パリから手軽に行くことができるスキー場だ。TGV、バスを乗り継いで、4時間半ほどで着く。週末しか休みをとれないけれど、やっぱりスキーをという人は、土曜の朝早いTGVに乗れば,土曜に半日、日曜は一日中スキーを楽しむことができるから、リフト1日券(35€)をめいっぱいに利用できる。
同僚二人は、それぞれクロスカントリースキー、テレマークスキーに挑戦するという。ボクは、スノーシューraquetteを履いて雪山を独りで歩いて楽しもうかな、ということを、泊っていたホテル(Les Chalets de LaSerraz)のディレクター、ガレーさんに話したら、さっそく、スノーシューとスキー用のストックを用意してくれた。といっても、このストック、別に必要ないとのこと。靴はというと、ウォーキング用のしっかりしたものさえあればいい。また雪質が固いか柔らかいかによって、靴のかかとを固定したり、固定しなかったりするということだが、この日は「雪が固い La neige est dure」ということで、固定しました。ガレーさんからいろいろとアドバイスをもらって、さあ出発。
雪山の中に入り込んでいくことができる、ということでついつい張り切りすぎてしまって、どんどん早いペースで歩いていく。ところが、都会生活で体がなまっていたということもあり、すっかり息が切れてしまった。このスノーシュー散歩、あなどってはいけない。クロスカントリースキーにも負けない本格的なスポーツだ。そこで歩調を弱め、自分に合ったペースを見つけるようにしたら、山の中に自分独りだということがつくづく実感できるようになった。耳の中に入ってくるのは雪を踏みしめる足音だけ…。
モミの木々の間を20分ほど歩いていくと、雪に覆われたアラヴィ山塊の素晴らしい全景が目に飛び込んできた。こうやって2時間も自然の中を歩いていると、すっかり心が休まり、静かでいながら晴れ晴れとした気分に満たされてくる。標高1500メートル地点の登り下りだから、かなり疲れが出てくるが、雪があらゆる音を吸い込んでしまう針葉樹林の間を歩く喜び…、パリ生活のストレスが消えていくようだ。でも翌朝、やはり足腰が痛みました。
ラ・クルザの町に戻ってから、お土産を買いに〈Régis Bozon〉へ。この店にはサヴォワ地方の名産品が豊富に揃っている。近郊の村々で手作りされた豚肉製品のみごとなこと。中でも、くん製されたり、ロバの肉を使ったりしたソーシソンがおすすめだ。チーズなら、トーヌという隣村で作られているルブロションとトム。どちらも農家産の逸品だ。ワインは、サヴォワならではのモンドゥーズという種類のブドウから作られる、同名のワインに尽きる。赤の方は透明感のある美しい朱色。フランボワーズを思わせるフルーティさを持ちながらも、きちんとしたこくがあり、ソーシソンやルブロションに最適のワインだ。(ダ)