イスラム文化圏のただ中で、地域の人々と平和に共存する8人のカトリック修道士。だが静かな修道院にも、イデオロギーで武装した暴力が忍び寄る。異文化共存の難しさを、気高い信者の姿を通し描くグザヴィエ・ボーヴォワ監督の『Des Hommes et des dieux』。一般公開を前に、カンヌ映画祭での会見の模様を紹介したい。
本作は1996年にアルジェリアで起こった実話に基づく。この事件を長らくメディアは「イスラム武装勢力が修道士を誘拐し殺害」と報じてきたが、昨年「アルジェリア軍が修道士を殺した」とする新たな証言も飛び出し話題に。今もアクチュアリティであり続けるデリケートな題材だが、ボーヴォワ監督の興味はあくまで人間そのものであった。
「私は脚本を読み、すぐにこの修道士たちの人生に驚き、魅惑されました。このエゴイストな社会にあり、彼らは他人や他の宗教にも興味を抱いている。タイトルにある「神」は複数形ですが、それは他に心を開くことを表したかったから」
一方、修道士のリーダーを演じた俳優ランベール・ウィルソンは、「撮影中、僕たちも奇妙なことに修道士たちが持っていた一体感を現場で感じました。歌は人々を融合させる素晴らしい力があります。映画の中で吹き替えせずに典礼聖歌を歌ったのですが、私たちは愛の一体感を感じ、本当の兄弟になりました」と熱っぽく訴えた。
また本作の見どころのひとつでもあるキャロリーヌ・シャンプティエの手による美しいカメラワーク。ラスト近く、純白の雪が悲劇を包み込むかのようにスクリーンに広がるのが忘れ難い。「奇跡でした。まさに理想的な時に雪が降ってきて。その後、雪のないシーンを撮らなければならない時には、ちゃんと太陽が出て溶けてくれました。映画全体が神の恩寵を授かっていたみたい」とボーヴォワ監督は回想する。
会見の途中、会場にちらと視線を投げた監督。「たくさんジャーナリストがいると思ったら半分は関係者ばっかり! 失望した」と大いに笑いを誘ったが、ふたを開けたら見事グランプリを受賞。こちらも神の恩寵か? 本作はフランスで9月8日から全国ロードショー。(瑞)