3年間で4回政権交替をくり返し、2008年には、9カ月間内閣不在後成立したルテルム連立政権も今年4月に崩壊。6月13日の連邦議会選挙(比例代表制)の結果は、近年のオランダ語圏独立派勢力の高まりから予想されてはいたものの、それ以上に意表をついたのはオランダ語圏の独立を掲げるデウェーフェル党首(39)が率いる新フランドル同盟N-VAの圧勝だ。前回の選挙では当選者1人だったのが、一挙に27議席(28.2%)を獲得し、第1党にのし上がる。
ブリュッセル両語圏と南部フランス語圏ワロン地域では社会党が26議席(36.6%)を獲得。150議席中、オランダ語系88議席、仏語系62議席。新連立政権が失敗に終わるのを見通してか新フランドル同盟党首は、首相の座を仏語系社会党のディ・ルポ党首に譲っているようだが、連立協議が何カ月続くか分からない。7月1日からベルギーが欧州連合議長国を務めているだけにEU諸国も当惑ぎみ。
新フランドル同盟党首は、北部の独立運動の激化と南部ワロン地域住民の分裂への宿命感の深まりを待ち、熟した柿が落ちるのを待つように最終的分裂の機会をうかがっている。が、チェコとスロバキアのように分離した場合、ブリュッセルと国王はどちらに? デウェーフェル党首の構想は当分、連邦政府に国防・外交などを任せ、3地方政府に税制や社会保障まで権限を移し、徐々に独立への道を固めていくようだ。
1830年ベルギーがオランダから独立した当時、仏語系階級が経済・社会的にも支配していた。言語的差別は言語戦争に発展し「言語境界線」が引かれた。60年代以降、南部ワロン地域の炭坑産業の衰退とは逆に、北部オランダ語圏の近代産業が発展しつづけ南北関係が逆転。オランダ語を身に付けようともせず、失業にあえぐ仏語圏住民の社会保障費まで負担させられているという不満がオランダ語圏住民に根付き、民族主義運動とともに移民排斥感情も強まっている。
オランダ語圏地方政府内務省は言語的弾圧を、とくにオランダ語圏に位置するブリュッセル周辺地域で強化している。仏語話者が80%を占める同地域の公立図書館のオランダ語蔵書量を全体の75%と規定したり、仏語の投票通知を投票者に送った科(とが)で市長の懸章を剥奪したり、不動産業者は仏語系賃貸・購入者を拒否、レストランでも仏語話者には給仕しないとか。市民団体〈言語行動委員会〉や過激派住民は、仏語の看板を掲げる商店を密告し、同店のウインドーに排撃的落書きを吹き付けたり…。仏語使用者に対する嫌がらせがフランス語の排斥運動に発展。
2言語共存のためブリュッセル周辺地域の役所や法廷でフランス語の使用を認可した1962年法を、北部独立派は全面的に廃止すべきだと要求する。居住地はオランダ語圏、心はフランス、というフランス語系住民の将来、欧州連合の首都ブリュッセルの将来は?(君)
写真:ベルギーの6月13日付ソワール紙。
上がデウェーフェル党首、下がディ・ルポ党首。