「罪と罰」。日本の 死刑制度について再考。 “Crime et Chatiment”

 テーマも展示品も重い。会場を回る間、見えない手で、中に血が入った張り子の石を頭の上からぎゅうぎゅう押さえつけられているような気がした。5月1日号でも軽く扱ったが、思い直して、きちんと紹介です。
 長年死刑制度廃止のために闘い、ミッテラン政権下で法務大臣になって廃止を実現したロベール・バダンテールの発案で、犯罪者、裁く人、裁かれ方、マスコミや科学者の犯罪の扱い方を、多角的に見せている。本物のギロチンやカフカの小説からヒントを得た拷問台が度肝を抜く。
 これが死刑廃止前に企画されていたら、死刑廃止の主張がもっと強く出ていたと思うが、「フランスではもう死刑は存在しない」と、過去を振り返る余裕のようなものが感じられる。けれども、死刑が存在する日本から来た私たちにとっては人ごとではない。まして、裁判員制度ができてから、普通の人たちが死刑を含む量刑を判断するようになった。それを念頭に置いて会場を回ると、ぼーっと見て回るのとは違ったものが見えてくる。
 日本の死刑は絞首刑だ。ヴィクトル・ユゴーが描いた、暗い中にぽつんと吊るされた顔のない絞首刑者のペン画の凄惨な迫力。今にもギロチン台に上がろうとする男に十字架を手にした神父が駆け寄るエミール・フリアンの油彩『死刑 La peine capitale』。それだけでも死刑の場面をいくばくか想像できる。昨年、日本政府が行った死刑制度についての世論調査の前にこの展覧会が日本で開催されていたら、死刑容認が85%を越えた結果は、少しは違ったものになったかもしれない。ユゴーは死刑廃止論者だった。その主張はともかくとして、ユゴーの感情溢れる優れた素描が多く見られる。
 ギュスターヴ・モローの、この世の果てにいるような『鉄器時代、カイン  L’Age de fer, Cain』や、ハインリヒ・フュースリの『マクベス夫人  Lady Macbeth』も、見がいのある作品のひとつだ。
 この展覧会を見て気持ちが重くなった後は、口直しに、同じくオルセーで開催中のマイヤー・デ・ハーン展を見よう。重い臓物料理の後にシャーベットを食べたような清涼感が味わえる。6月27日迄。(羽)
オルセー美術館:9h30-18h、木21h45迄。月休。

Victor Hugo “Ecce, le Pendu”, 1854
Paris, Maison Victor Hugo
© Maisons de Victor Hugo / Roger-Viollet