ロバート・クラム 旧約聖書の『創世記』

●Robert Crumb “La Genèse”
 『フリッツ・ザ・キャット』や『ミスター・ナチュラル』の生みの親、ジョプリンの『チープスリル』のジャケットでも知られるロバート・クラム(66)。彼が描く女たちの、超ミニスカートからはみ出る太ももが放つ過激な性の匂いに酔ったのはボクだけではないだろう。1990年代に南仏に移住してから少々影を潜めていたが、待ちに待った新作は、なんと旧約聖書の『創世記』!  220頁の大作だ。彼が、古代文明への情熱から出発し、メソポタミア文明の神話などと比較しながら数年間『創世記』に取り組んだことが、巻末の注などからうかがえて面白い。テキストは驚くほど旧約に忠実だ。
 いちばん想像力を必要とされたに違いない天地創造のところでまず心を奪われる。格調あるじっくりと描き込まれた描線の美しさ。それに続く、土から産んでやった人間たちの、絶えず神を裏切るようなドラマは、まったくクラムの独壇場だ。神も喜怒哀楽を丸出しにする。ユダヤ人社会が母系制だったこともあるのか、やはり女がたくましい! 人間が絶えないためにと、年老いた父にまたがってセックスする姉妹。アブラハムの子を産んだサラの生き様は涙を誘う。そんなユダヤの女たちに、ボクは今村昌平の『神々の深き欲望』の沖山秀子を見た。
 ポンピドゥ・センターで「聖書は神の言葉ではなく、人間の言葉だ。最初から最後まで作り話だと思っています」とクラムはぬけぬけと語ったという。(真)

Denoël発行。29€。