『ローズマリーの赤ちゃん』、『テス』、『戦場のピアニスト』などの作品で知られるロマン・ポランスキー監督(74)は、1977年に米国で13歳の少女を強姦した容疑で逮捕され、43日間服役後フランスに逃亡した。30年以上経った昨年9月26日、スイスに入国した際に、米司法当局の国際指名手配を受けたスイス警察によって逮捕された(664号参照)。12月4日に保釈金を払って、グスタードにある同監督の山荘に移送され、現在は、米国への送還いかんが決定されるまで、電子ブレスレットを装着され山荘の敷地外へは出られない状態だ。
5月2日、哲学者ベルナール=アンリ・レヴィのブログに「もう黙ってはいられません」というポランスキーの手紙が掲載された。
「私の運命に同情してもらおうとお願いするつもりはありません。みんなと同じように扱ってほしいとだけお願いしているのです。なるほど、33年前に(司法取引で)私は有罪であることを認め、チノの刑務所に服役しました。(…)その刑務所から出た時、判事は取引を無視し、チノで服役した期間は私の刑の全体をカバーしないと主張したのです。このひょう変ぶりがあったからこそ、私は米国から去ったのです。(…)私はもう黙ってはいられません。というのも、私への訴追を停止し、この事件が騒がれるたびにハラスメントされることのないようにしてほしい、という被害者の要請が、またまたカリフォルニア裁判所で却下されたのです。(…)私はもう黙ってはいられません。というのも、私の弁護士たちは、私が判事に裏切られ、司法取引を破られ、私は刑を全うしていると、30年以上も繰り返しています。私はもう黙ってはいられません。というのも、この事件を再び扱うことになり、私の身柄引き渡しを要求しているダヴィッド・ウォルグレン検事は、選挙キャンペーンの最中で、メディアで名を売ることが必要なのです。(…)私はもう黙ってはいられません。というのも、非常に多額の保釈金(約300万ユーロ)を払って自宅拘留されています。その保釈金を集めるために、30年以上住んでいる住居を担保に入れ、家族から遠く離れ、仕事もできない状態です」
米国では一般的な司法取引とはいえ、有罪を認めたからといって、少女強姦罪で43日間服役という刑はあまりに軽いと思う人も多いかもしれないが、この手紙には、その取引に従って服役し、その後、米国からの亡命をやむなくされたポランスキー監督の苦悩と怒りが溢れている。亡命後も傑作を取り続け、数々の映画賞を得た彼の名声こそが、ダヴィッド・ウォルグレン検事にとっては、願ってもない標的だったのだろう。(真)
写真:5月3日付リベラシオン紙。