「ゴダールのおヘソに皆が興味を持つ」
Bruno Dumont
フランスには2種類のプロデューサーが存在します。まずは「映画は産業」と割り切り、投資対象としてお金を得ようとするタイプ。もしくは援助システムを当てにし、国の前貸し制度やテレビからの前買い、地方都市からの援助といった申請窓口を最大限に申し込み奔走するタイプ。 私には日和見主義、便宜主義的な態度に見えます。彼らは映画プロデューサーというよりもお金の管理者に近いです。
もし自分自身を語ろうとする映画の企画なら、プロデューサーは止めさせた方がいいでしょう。フランスには「ゴダールのおヘソ(=内面)に皆が興味を持つ」という非常に悪い伝統があります。多くの監督がゴダールの真似をし、自分の物語を平気で語るようになりました。でも自分語りをしたいなら、よっぽど立派で素晴らしいおヘソを持ってないとダメです。私は自分自身や自分の人生を語ろうなどとは一切思わない。もっとユニバーサルな物語を語ろうとしているつもり。映画『フランドル』だってそのつもりで撮りました。そういえばある時期の日本映画はとても良かったです。小さな村の物語を語りながら、それが全世界を感動させたもの。私はパリジャンたちの会話で埋め尽くされ、己ばかりに目を向けた現代フランス映画というものが全く理解できません。つまりフランス人は病気、ノイローゼ。心に問題があるんです。そんなこと、映画を見ればわかります。
現代フランス映画は、狭い世界ばかりに目を向けた閉じた作品が多いことは明白。たとえ自分について思考するためでも、自分ばかりを見ていては見えるべきことだって見えてこないものです。そんなものはわざわざ映画にしなくても、TVドラマでも毎日見られるものでしょう? それに4分の3以上のフランス産コメディ映画は質があまりにも低過ぎ。テレビの影響が大きいのですが、フランス人はとてもとても馬鹿だということです。低俗なユーモアにすっかり慣れきっている。テレビはいつも同じお笑いタレントを使い、彼らは徒党を組み内輪で宣伝し合って番組を作り合っているだけなのです。(聞き手/瑞)
ブリュノ・デュモン
映画監督。フランス北部バイユール出身。
性、暴力、狂気、信仰とタブー知らずの骨太シネアスト。代表作に『ユマニテ』『フランドル』。両作ともカンヌ映画祭グランプリ受賞の経歴を持つ「賞取り男」。最新作は『Hadewijch』。