『それが人生だ! カラヴァッジョから ダミアン・ハーストまでの消えゆく生』 “C’est la vie! Vanites de Caravage a Damien Hirst”

  天使が頭骸骨にもたれて眠っているポスターを見て、こんな気色悪い展覧会に人が入るのかと思っていたが、水曜日の午後は団体で満員だった。
 題名のVanités(消えていくこと、虚栄)は、旧約聖書の伝道の書第一章に由来している。「Vanité des vanités, tout est vanité. 消えゆくものは消えてゆく。すべては消えゆくなり」。もう一つ、西洋でよく聞く言葉「メメント・モリ(自分がいつか死ぬのを忘れるな)」。この二つを象徴するのが、展覧会のテーマである「どくろ」だ。
 中世から現代に至るまでの、どくろを題材にした絵画、彫刻、宝石160点を見て、気色悪さは消えなかったが、西洋における死と生について考えさせられた。聖人の骨をきらびやかな聖遺物箱reliquaireに大事にしまっておくカトリックの習慣を見て、なぜそんなにホネに執着するのか、不可解だったが、それが少しわかった気がした。
 フランス語でどくろは「死の頭 tête de mort」と言う。人は誰もが死ぬ。死ぬのは怖いが、死んでしまえば怖いものは何もない。そこで価値観の逆転が起こり、「死=どくろ」が永遠の象徴として価値を帯びてくる。
 会場は、時代ごとに分かれている。そのまま入ると一番大きな現代美術の部屋から回ることになるが、おどろおどろしさがないので、この部屋から始めるといい。銀の歯をしたニキ・ド・サンファールのどくろはあっけらかんとしていて、鎌倉の大仏のように大きかったら、口や鼻から中に入ってみたくなるような楽しさがある。ダイアモンドでできたダミアン・ハーストのどくろは豪華絢爛。
 ヨシダキミコの金箔を散りばめたガラスのどくろは、飴にして口に入れたいような美しさだ。
 上階には、どくろを加えたセザンヌの静物や、どくろをモチーフにしたアクセサリーがある。
 それにしても、死ねば性別はなくなるはずなのに、この展覧会で見たどくろには男性性が付加されているように思える。どくろを前に胸をはだけて涙を流すマグダラのマリア、どくろを手にして恍惚におちいる聖フランチェスコ…死と永遠まで男性原理で支配されているとは、これもまた発見だった。(羽)
Fondation Dina Vierny-Musée Maillol :
59-61 rue de Grenelle 7e 10h30-19h。火休。6月28日迄。

Niki de Saint Phalle  “Tête de mort II”, 1988  Collection particulière
© Galerie JGM/2009 Niki Charitable Art Foundation/Adgp, Paris 2010