朝のラジオは、「パンくずが出ない、ベッドでの朝食!」
ジャズをラジオでたっぷり聴こうと思ったら、迷わずTSFだ。朝6時から放送が始まる同局のパーソナリティーの一人がロールさん。ロールさんの仕事に対する熱意に呼応するがごとく、彼女を取り巻くスタッフは、早朝にもかかわらず、スタジオ内に和んだ雰囲気を作り出している。その温かさが電波を通してリスナーの元へ届けられる。伝える者、受け取る者、そしてそれを影で支える者。互いが、相即不離、一つにとけあって区別できない関係といえるだろう。
毎朝4時30分起床、自転車でスタジオに向かう繰り返しの毎日。一過性の番組ではないので、毎日定刻に、時勢の情報をいち早く伝えるための情報、そして彼女の意図に沿う文化的話題を集める必要がある。毎朝8時30分からの〈Coup de projecteur〉では、シネアスト、推理小説家、イラストレーターなど、ロールさんが興味を抱く人々を毎回招いている。また、日曜午後の番組作成のため、午後はゲストと共に録音。もちろんゲストを招く基準には、「ジャズへの好奇心」という共通項が存在する。彼らが持ってきたCDをかけることも多い。編成部が用意した選曲で番組を進めるという構成をとっているので、この番組はロールさんにとっては自分の力を発揮できる瞬間といえる。要するに、マーケティング外の音楽を流せるひと時なのだ。
「元々経済ジャーナリストとしてキャリアを積んでいましたが、TSFに入ったのは、ある出会いをきっかけに、要するに、スカウトされたのですね」。TSFでは編成スタッフとしてスタート。その後上司に「声のよさ」を買われ、ディスクジョッキーに抜擢された。「朝の番組をやるようになって2年になります。ジャズをはじめ音楽は好きですが、何年の録音だとか、どこでの演奏だとか、ジャズ好きの世界では往々にあるこの種の関心を私は持ち合わせていません。それに、自分がまさかラジオのディスクジョッキーをするなんて、全く想像していませんでした。実際のところ今でも信じられませんが…。第一、幼少から自分の声が嫌いでした」
制作、進行フォームはすでに決められているものの、彼女は決してそれに甘んじない。「毎日さまざまな分野で活躍する人々をスタジオにお呼びしますので、その下準備、コンタクト、瞬く間に日は暮れ、そして翌早朝を迎える、そんな毎日です。やりがいがあると同時に、長くは続かないですね。プライベートの時間はごく限られています。ただ、ラジオの同僚やゲストを通して、常に新しい価値観や文化情報を発見できる。それがこの仕事を続け、またそれを自慢にできる所以だと思います」。その意気込みは、電波を通して聞こえてくる彼女の声からひしひしと感じられる。
「私が担当しているのは朝一番の番組ですので、番組自体がLe petit déjeuner au lit, sans les miettes(パン屑のない、ベッドでの朝食)!」
でありたいなと思っています」
寒い日が続き、つい布団の中の極楽にひたりたいところであるが、ベッドの中でもいい、朝6時にFM89.9MHzにラジオを合わせ、彼女の声に耳を傾けたいものだ。