ミナレット拒否の余波。

 11月29日、スイスが国民投票(投票率53%)でモスクの尖塔ミナレットの建設に投票者の57.5%が反対したことで、西洋諸国がショック下に。と同時にベルギー(フラマン語圏)やオランダ、イタリア、デンマーク他の極右系大衆主義ポピュリスト政党が勢いづく。フランスの国民戦線党マリーヌ・ルペン副党首もこの動きに便乗し移民・アンデンティティ問題を3月の地方圏選挙運動の目玉にする構えだ。
 スイスには欧米他、イスラーム諸国の金持ちの金が集まってきているのと同時に、60年代からトルコやバルカン諸国からのムスリム系移民が増え、今日約40万人。敬虔な信徒は約5万人、礼拝所は150カ所、ミナレットは4塔ある。特に9・11以後、欧米人がムスリム系移民と関係づけがちなイスラーム原理主義やテロ、治安・失業問題などに不安を抱くスイス人が、ミナレットを拒否することで「スイスのイスラーム化に反対した」とみられる。
 フランスのムスリム人口は約550万人、今日イスラーム(17%は毎日5回礼拝)はキリスト教に次ぐ宗教だ。だがパリジャン紙(12/10付)掲載のCSA世論調査(12/2-3)よると、82%がカトリックは仏社会と折り合うと答え、イスラームに対しては54%。礼拝所は約2000カ所、モスクはリヨンやナント、パリ郊外エヴリー、クレテイユ他約200(マルセイユに大規模なモスクが建設中)。パリ5区にあるモスクは1926年建立、ミナレットの高さは33m。そこからは礼拝告知はされず象徴的存在だ(全国に10塔)。07年メルケル独首相はミナレットの高さを教会の尖塔以下に制限している。フランスでは政教分離の共和国憲法により宗教的建造物への公的援助はないが、図書室など文化施設には自治体が経済的に援助できる。
 サルコジ大統領は12月9日付ルモンド紙で「国家アイデンティティこそコミュノタリズムに対する解毒剤」「人種のメティサージュはコミュノタリズムの逆でともに生きること…原住者が新来者を迎え入れ、旧来の文化・歴史を分かち、新来者がそれらを尊重することで思想・文化のメティサージュ、同化が可能に…我が国はキリスト教文化の根が深く、それと共和国の価値観とで国家アイデンティティをなしている」とキリスト教文化を土台にした国家アイデンティティを強調。大統領はイスラームを新来宗教、キリスト教を伝来宗教として新旧関係におく。さらに「宗教的誇示は控えること」と信徒の外見にまで言及。11月に「ブルカはフランスでは受け入れられない」と元首として拒絶。与党にはブルカ禁止法を提案する声も聞かれる。04年イスラーム女生徒の校内でのスカーフ着布を禁止しており、スカーフ、ブルカ、ミナレット…とフランス他西洋諸国でイスラームの外見までも目ざわりになりつつあるようだ。 
 世界のムスリム人口は約16億、アジアに60%、中東20%、アフリカ15%、欧州2.5%(3800万人)。今日これほどイスラームが問題視されるのは現代社会の自我喪失への焦りから?(君)

写真:La Grande Mosquée de Paris(1月7日撮影)


 

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