11月18日に行われたサッカーW杯予選プレーオフのフランス対アイルランド第2戦以来、マスコミでとにかくよく目にし、耳にしたのは「main(手)」。「奇跡の手」、「黄金の手」、「カエルの手」…。
ダブリンでの第1戦で1-0で勝ったフランス、この第2戦で引き分けなら南アフリカで開催されるW杯進出が決まるはずだった。ところが大方の予想に反し、アイルランドが1-0でリードしたまま延長戦にもつれ込んでしまった。延長14分目、フランスのティエリ・アンリ選手が、フィールド外に出そうになったロングパスを左手ですくうようして止めて左サイドからセンタリング。ガラス選手がヘッディングを決め1-1、そのまま引き分けになってフランスの来年南アフリカで開催されるW杯への進出が決まった。
そのあまりにも故意的なハンドの反則、見えなかったのは審判だけ! 試合直後、反則を犯したフランス代表主将のアンリ選手自身も、「ボールがバウンドして手に当たった。審判がホイッスルを鳴らさなかったので、もちろんプレーを続けた。でもハンドの反則がなかったとはいえない」と苦しい弁明。試合後テレビではそのハンドが繰り返しリプレイされたが、どう見ても「バウンドして手に当たった」とアンリ選手が受け身だったようには見えない。フランスのサッカーファンやスポーツ評論家も「恥ずかしい。再試合して堂々とW杯に進出してほしい」、「アンリ選手は主将でもあるのだから、反則したことを審判に告げるのがフェアプレー」などと批判。欧州各国の新聞の一面も「(いっぱいに広げてボールをすくった手のひらの様子をからかって)カエルの手で泥棒のアンリ選手は私たちからW杯進出を奪った」、「卑劣なゴール。アンリ選手はハンドボール選手?」、「アンリ選手は一生ペテン師の汚名から逃れられない」などと怒りの声にあふれた。その上、アイルランド首相は記者会見で再試合を要求し、たかだかスポーツの反則で終わるはずが、国家的騒動にまで発展。これも、右のコラムにあるように経済的な効果が大きいことが影響しているのだろう。
国際サッカー連盟は、再試合の可能性はないとただちに言明。アンリ選手は23日、「誰も味方してくれず、本当にショックだった。(…)一時は代表引退も考えたが、友人や家族らに思いとどまるよう言われ最後まで戦うと決意した」と犠牲者の立場に立ったような発言をし、さらにひんしゅくをかったりもした。こんな騒動の中、フェアプレー賞は、最初の1点を上げたロイ・キーン選手だろう。「再試合、再試合というのはやめるべきだ。私たちには何度もゴールのチャンスがあったが、それをものにできなかったのだし、ガラス選手がゴール前に一人だった、というデフェンスが問題なのだ」(真)
11月20日付パリジャン紙。