シラク氏起訴される。

 1995年から2007年まで元首の免責特権により司法的にもアンタッチャブルだったシラク前大統領に、パリ市長時代のツケが回ってきそう。
 シラク元市長が「架空雇用者」給与をパリ市のお金で支払っていた疑いで98年、エコロジー派のブロッソ氏が一市民として提訴した後、01年ドラノエ新市長がシラク元市長に対し同件をめぐりパリ市として民事訴訟に乗り出した。93~02年(92年以前の容疑は時効)当時のシラク市長が「特別官吏」として雇った481人中35人に、パリ市の仕事とは関係ない95年大統領選挙運動や地元コレーズ県の活動などをさせパリ市から給与を支払っていた疑いで「公金横領」「背信」容疑で、07年11月グザヴィエール・シメオリ予審判事がシラク元市長に対する取り調べを開始した。
 77~95年、シラク・パリ市長の気前の良さにあやかったスポーツ選手や組合・協会関係者は数えきれないが、パリ市の架空雇用疑惑の中で、市長元官房長ルサン、シャルドン両氏は背信共犯容疑で、ドゴール大統領の孫ジャン・ドゴール元代議員やドブレ憲法評議会会長の弟フランソワ氏、シャラス元外相夫人、ブロンデルFO労組元書記長(運転手給与7万5 千ユーロをパリ市が支払う)など7人が、市長との友好関係を利用した「情実的」報酬を受けた疑いで共に起訴された。
 大統領退任後、一市民となったいまも国民の76%に人気があり、外国でも元首扱いされる76歳のシラク氏を起訴することに対し、ロワイヤル社会党前大統領候補などは「フランスのイメージを害する」と批判的。シラク市長時代に財政助役だったジュペ元首相が、当時の与党RPR職員の給与をパリ市から支払った科(とが)で、04年に執行猶予付懲役14カ月と1年の被選挙権剥奪刑を受けているのだから「この問題を再び掘り返すことはない」とベルトランUMP書記長。
 シメオリ予審判事は98年以来、同雇用疑惑の調査にあたり、3年間のシャルトル地方裁勤務後、03年から同疑惑を再調査。彼女の孤軍奮闘を阻むためか9月29日、検察側は「架空雇用の確証なし」として全容疑者の不起訴措置を決定した。それに反撃するように10月30日、同予審判事は容疑者らの軽罪裁移送を決定。それに対し控訴するとみられていた検察は11月3日、控訴を取り止めたので来年秋には裁判が実現する予定。
 シメオリ予審判事(57)は地味な女性だが、一度かみついたら離さない根強さをもつベトラン予審判事として知られる。すでに欧州航空・宇宙企業EADSや石油会社Total、重電メーカーAlstomなど大手企業の各種疑惑を担当。
 前代未聞の前大統領起訴という彼女の勇断に司法界でも驚きと賞賛の声。11月5日に出版されたシラク氏の回想録へのマスコミの鳴物入りの反響の中で、シラク氏の起訴問題はかき消されそう。しかしサルコジ大統領発案の司法改革により、もうじき廃止される予審判事の存在の重要性を彼女は体を張って示しているといえる。(君)


時を同じくしてシラク氏の回想録が出版された。