喜怒哀楽がはっきりと顔にでるロジーヌさんは、合唱団で歌ったり芝居、映画、展覧会に飛び回る行動派。一方、穏やかで静かなノエルさんは、切手収集とラグビーのテレビ観戦が楽しみだ。もと高校と大学の数学教師だった二人は、今は定年退職者。性格も好みもバラバラ。普段は小さなケンカがたえないが、「一緒に眠り、一緒に食卓を囲むこと」をモットーに45年間、暮らしてきた。 17歳と19歳の時、学生食堂で顔を合わせる仲だった。「優等生の彼に数学の個人レッスンを頼んだことがきっかけだったの」とロジーヌさん。翌年、選抜試験に落第した彼女はパリ第7大学へ、ノエルさんは高等師範学校へ進む。その年に婚約。でも結婚までには、壁が立ちはだかっていた。クリシー市に安アパートを見つけたものの、「宗教の違い」を理由に、家族の猛反対にあったのだ。認められるまでの一年間、二人だけで、バトームーシュの上で誓い合ったことも。学生時代に長男と次男が誕生した。 5年前に退職してからは、3人の孫の面倒を見るのが、一番の楽しみだ。「家族の連帯が何よりも大切」という二人は、年間スケジュールを孫の行事に合わせるほどの、お助けパピーとマミーである。だが同時に、息子夫婦との世代間ギャップも、感じている。「彼らの子育ては、危なっかしくて見ていられないわ。つい口をはさんでしまうのが私の悪い癖よ」とロジーヌさん。彼女にとって息子たちは「永遠の子供」。いつまでたっても心配の種はつきない。 「定年になってからは、毎年二人で遠い海外に旅行するようになったの」。20代前半で親になった彼らにとって、二人だけの時間を過ごした記憶は、あまりない。気がつけば、いつも親類に囲まれていたし、二人で休暇に出かけたこともなかった。「実をいうと、孫の世話も長時間は重荷になってきたんだよ。60をこえてから、昔のようには動けなくなって」と嘆くノエルさん。「せまる老い」へのジレンマは、「理想の家族像」とのギャップを生みだすのであった。(咲) これから相手に期待したいことは? 「互いにできないことを補っていこう。一生涯、僕の料理をお任せするよ」(ノ)「コンピューターは全部、私の分を引き受けてくださいね」(ロ) 前回のバカンスは? 夢のバカンスは? 最近二人で観た芝居は? お気に入りのレストランは? |
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