今年のアングレームBDフェスティバルでも話題になった1冊。シナリオは自身でも子供向けのエネルギーがほとばしりそうなBDを描いているリザ・マンデル、絵は、ロバート・クラムなどの影響を受けながら今の強い女たちを描いてきたTanxxx(本名はマチルド・アルノー)。 二人が合作したらどんな作品が生まれるのか?
話の内容は、まるで三面記事。16歳のマリーは、ロシアからめとられた義理の母とレスビアンの関係で、その現場を発見した父と争いになり、父は棚に頭をぶつけて昏倒状態に。マリーはその義理の母にも見捨てられ、町に出る。そこで男に捨てられたばかりの美容師アドリエンヌと出会うが…。
これまでのフランスBDとは違って、せりふも簡潔で勢いがあり、太い輪郭で描かれる人物や版画タッチの背景は、ちょっとボクらの大好きな『ゴーストワールド』のダニエル・クロウを思わせたりする。でもキャラクターの顔や表情はどこまでもフランス風、それも都会風ではなく、どこかあか抜けていない田舎町風。だからか、話は犯罪すれすれの境界をさまよっているけれど、ちっともミステリアスでなく、さばさばっとした明るさがある。この辺が好き嫌いの分かれ目だろうが、ボクは好き。そして、この明るさも表面的? と思わせるラストのページの切れ味。(真)
Casterman社発行。16€。