モデルの内面が透けて見える。 “Van Dyck (1599-1641)”

Portrait de Jacques Le Roy, Musée Thyssen-Bornemisza, Madrid © Musée Thyssen-Bornemisza, Madrid 西洋で美術館巡りをすると、必ず貴族やブルジョワの肖像画に出会う。めかしこんでポーズをしたモデルは没個性的で、歴史上の著名人物でもない限り興味をそそらない。退屈なので、ほとんどすっとばす肖像画コーナーで、「これは」と目を引く絵がある。作者を見るとファン(英語読みではヴァン)・ダイクであることが多い。
ジャクマール・アンドレ美術館では、ファン・ダイクの肖像画ばかりを集めた展覧会を開催している。これだけの数を見られることは滅多にない。
ファン・ダイクは、描かれた人物が見る人に向かって語りかけてくる絵を描く稀有な作家だ。誰もが注文を受けて肖像画を描いていた時代、モデルの内面が透けて見えるかのように描き、さらにモデルと見る人とのコミュニケーションを可能にした画家は、そういない。
絵を前にすると、モデルの心理が感じられる。名前を見てもどういう人なのかわからないから、先入観なしで対面できる。そのあとカタログを読んで、自分が受けた印象とモデルの実人生を照らし合わせてみるのも楽しい。
『男の肖像』のデジデリオ・セグノは、生き生きとした表情で、頭の回転の良さがわかる。職業は仲買人。さぞかし商売上手だったことだろう。60歳を超えているにしては若く見える「ジャック・ル・ロワ」の顔には、意志の強さと諦観が交錯している。戦争で財を成した爆薬商人で、肖像画が描かれた数年後に貴族の称号を得た。22歳の『アンナ・ウェイク』には、嫌なものは絶対に嫌という頑固さがある。ちょっと泣きそうな顔をした『チャールズ1世』は、「もう王位には疲れたよ」とでも言いたげだ。28歳の『ウィリアム公』は、頭が良く、少し軽く、けれども落ち着いた性格に見える。劇作家だったとわかり、納得。
世俗の人の肖像は素晴らしいのに、宗教画は型にはまっていて、面白くない。その落差が垣間見えるのが、『イエスを抱くマリアを讃えるチェザ−レ・アレスバンドロ』。型通りの役を演じるチェザーレと、「おじちゃん、遊んでよ」と言って動き出しそうなイエスのミスマッチがおかしい。(羽)

Musée Jacquemart-André : 158 bd Haussmann 8e
01.4562.1159  M。Miromesnil  無休。1月25日迄。


 

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