フランス国営テレビのCMを廃止するという政府案に反対するデモに参加した唯一のニュースキャスターが、France 3の19時30分のニュースを担当し始めて4年のオードレ・ピュルヴァール(36)。「左派系のジャーナリストという言い方は意味がない。ただジャーナリストであるだけだ。プレスカードを持っている私と、選挙に投票する私の間に一線を画している」と語るが、今年の6月、ゲストとして招いたサルコジ大統領にかみついた。「2万5000人の違法入国者を国外退去するために、どれだけの外国人を逮捕したのですか?」。この質問をかわそうとする大統領に同じ質問を投げかける。「この問題があなたの心の琴線に触れるということはわかるが、私だって心が痛むのです」と認める大統領。「一人の人間として心が痛むのです」と切り返すピュルヴァール。「私にだって心がある」と大統領…。翌日からFrance 3のニュースの視聴率は2%アップした。
ピュルヴァールは、1972年、海外県マルチニークのフォール・ド・フランスで生まれた。父は、「人民に言葉を」という政党を創り上げた数学の教師。反抗期のオードレを持て余して、14歳の彼女をパリの叔母のところに預ける。反抗期を脱したオードレはジャーナリスト養成学校を優秀な成績で卒業し、23歳の時にマルチニークのテレビ局に採用される。「私が黒人であるということが、ジャーナリストの職を得るために役に立ったかもしれないけれど、その後は、それが正しかったことを認めてもらうために、人並み以上の努力をしなければならなかった」(真)