「断絶と詩的冒険と感覚的恍惚の作家であり、台頭する文明を超えて、さらにその上に人間性を求めて行く探求家」であるとして今年のノーベル文学賞を受賞したJ.-M.G.ルクレジオ(作品はこのように署名)は1940年ニース生まれ。23歳の時、処女作『調書』でルノドー賞を受賞し、以降、コンスタントに作品を出している。10月9日にノーベル文学賞受賞が発表されてから、書店には、ルクレジオのこれまでの作品、そしてちょうど10月2日に出たばかりの新刊『Ritournelle de la faim(渇望のリフレイン)』が山積みだ。
1985年にノーベル文学賞を受けたクロード・シモンの小説はフランス人にも難解とされたが、ルクレジオの小説はかなり読みやすく、1994年には月刊誌「Lire」の読者が選ぶ「現在最も偉大なフランス人作家」に選ばれたほどよく読まれている(ちなみに当時はクロード・シモンもまだ健在だった)。にもかかわらず、これまで「フランス」文学の中ではどちらかというと地味な扱いであった。今回の受賞で「フランス語」文学であろうとするルクレジオの小説の再評価がいかに行われるかも楽しみだが、受賞後のラジオ局でのインタビューで、自分の作品はクロード・シモンの『フランドルへの道』には及ばないという彼の作品がさらなる飛躍を遂げるかも興味深いところだ。(樫)
「Mon message est qu’il faut continuer de lire des romans car c’est un bon moyen de comprendre le monde actuel. Le romancier n’est pas un philosophe, ni un technicien du langage, mais celui qui écrit et pose des questions.
私のメッセージは、小説を読み続けなければならないということだ。それは今の世界を理解するためのよい手段だから。小説家とは、哲学者でも、言葉の技術者でもなく、書く者であり、疑問を提示する者だ」
