引越CULTURE
ヤドカリくんから引っ越しの極意を学ぼう。
「引越しの達人、ヤドカリを観察してみては?」と、オヴニー編集部から提案を受け、いざ、パリ郊外の水族館「シーライフ」へ出発。昨年、引越しをしてみたものの、焦って決めたために、住まいにイマイチ不満が残る自分としては、達人ヤドカリくんから、快適引越しライフの極意を学びたいところだ。シーライフ専属の生物学者フィリップさんに、ヤドカリ観察をしながら、お話を聞くことにした。
そもそもヤドカリはなぜ引越しするのですか?
ヤドカリの腹部は柔らかく、敵から身を守るためにも堅い貝が必要なのです。ただし体は大きくなるので、成長に合わせて貝を替えなければなりません。
引越しはどのように行われますか?
ヤドカリは注意深いので、敵から襲われないように、貝なしで行動はしません。そして品定めし、気に入った貝が見つかれば、その時は即行動します。たとえ中に他のヤドカリがいても、追い出すことさえあるのです。
ヤドカリも競争社会なのですね。
しかしライバルを蹴り落としてまで良い家が欲しいというのは、寂しい一匹狼にも思えるのですが。
いえいえ、イソギンチャクと共生するヤドカリが多くいますよ。イソギンチャクはヤドカリの貝にくっつくことで、移動ができ、食べ物に困りません。ヤドカリにとっても、イソギンチャクがいれば、敵からしっかりと身を守ることができるのです。
お互いにメリットがあって共同生活をしているということですか。クールに見えて、赤の他人との共同生活もお手のものなのですね。そういえば、ヤドカリは何を食べているのですか。
「ここではムール貝やエビをあげています。匂いに敏感で、餌を水中に入れるとすぐに気がつきます。海では魚の死骸などを食べて、水をキレイにしてくれるんですよ」
キレイ好きならば、新しい引越し先でもご近所付き合いが円滑に進みそうですね。私も見習わなければ…。本日はありがとうございました。(瑞)
達人ヤドカリくん流引越しの極意
●成長に合わせて住まいを替え続ける
●常に警戒を怠らず注意深く行動する
●希望の住居を見つけたら即行動する
●SEA LIFE
熱帯魚、ゾウガメ、サメなど、300以上の海の生物に会えるイル・ド・フランス最大規模の水族館。ヴァル・デュロップのショッピングセンター内地下にある。アウトレットのラ・ヴァレ・ヴィラージュやディズニーランドからアクセスもよい。
Centre Commercial Val d’Europe
14 cours du Danube, Serris
77711 Marne la Vallée
01.6042.3366
RER A線Val d’Europe下車
徒歩5分
http://www.sealife.fr/
● 子どもたちに読んであげたいヤドカリのお話
La maison du bernard-l’hermite
度々引越しが必要な動物とは何でしょう? 答えはヤドカリ。
軟らかい腹部を守るために常に巻き貝に身を包み、成長とともに新しく見つけた貝に「お引越し」をするのだ。
フランス語でヤドカリはbernard-l’hermite(l’ermiteと書く場合もある)。Bernardと聞くと、なんだか人の名前のようだけど、この言葉は16世紀に動物を指すときに使った「bernat」が由来と言われている(例えばbernat-l’hermitoはヤドカリ、bernat-blancはシロサギ)。
hermiteは社会から離れて孤独に生活する人、つまり世捨て人を指す。
「はらぺこのあおむし La Chenille qui fait des trous」などで世界的に有名なエリック・カールのこの絵本には、ヤドカリの12カ月が描かれている。成長したために、居心地のよかった殻から抜け出して、新しい「おうち」にお引 越し。はじめのうち、新しい「おうち」は外見がシンプルすぎて寂しい雰囲気。
その後、たくさんの海の仲間たちに出会い、みんなに囲まれて「おうち」に愛着を感じていくヤドカリがとてもかわいい。
大人の私が読むと、まるで人間が新生活をスタートして、慣れない環境に少しずつ溶け込んでいく様子を描いているように感じてしまう。
カラフルでエネルギッシュな絵を見て、子どもたちはヤドカリだけでなく、海の世界にも心を寄せるだろう。 (穂)