クレマイエールを企画しよう!
フランスでは、引越しが終わり、ある程度落ちつくと、たくさんの友人を招いてお披露目パーティーをする、クレマイエール(crémaillère)という習わしがある。crémaillèreとは、暖炉の上で、自由に調節しながら、鍋がつるせるようにした自在カギのこと。
日本でも囲炉裏(イロリ)で使われていた。中世のフランスでは、自在カギを暖炉の上につるすこと〈Pendre la crémaillère〉が、引越しを締めくくる、最後の行為だった。それは鍋でブイヨンやスープを煮たり、「料理ができるようになった」あかしで、「人を招くことができるようになった」意味もある。転じて、今では「引越し後のお披露目パーティー」へと発展した。
普段から友人を自宅に招きあったり、パーティーを催すのが日常的なフランスでは、家具が全部揃っていなくても、一部が工事中でも(それは次の引越しまで続くこともある)、気楽に友人をよぶ。クレマイエールの一番の目的は、新しい家をみんなに見せることだから、家の隅々まで案内する。そして引越し前後の写真を見比べながら、引越しの苦労話やハプニングを聞かされ、界隈の様子やインテリアのことなど、話題はつきない。とはいっても長居する必要はない。隣人や引越しに協力した人たちが、ふらっと訪れることもある。それぞれ思い思いにお酒を持ち寄って、カジュアルな雰囲気の中、野菜スティック、パスタのサラダ、塩味ケーキ、シャルキュトリー、チーズなど、簡単な料理をつまみながらわいわいとやろう。
クレマイエールを企画する場合、日程が決まったら、建物内の目のつくところに、お知らせの紙を貼っておこう。普段は物音に敏感な住人も、この日だけは大めに見てくれるに違いない。引越しの挨拶まわりや贈り物の習慣がないフランスでは、
こんな機会を利用して、顔見知りになるのも一つの手。
では招かれた時、贈り物はどうしよう? 住む人の好みや新居との調和を考えると、頭を悩ませるところ。観葉植物や鉢植えなど、インテリアに花を添えるものが人気だが、友人に希望をきくのが一番てっとり早い。(咲)