リチャード・アヴェドン(1923-2004)のフランス初の回顧展。見終わったあとにすがすがしさが残った。アヴェドンの人間性に触れ、彼の人を見る目の深さに浸ることができたからだろう。 ニューヨーク生まれ。大学を終えて、デパートの宣伝写真を撮っていたときに、ファッション誌「ハーパース・バザー」のアートディレクターに才能を見出され、同誌で20年働いた。アヴェドンはファッション写真に動きをもたらし、意表を突く構図を創り出した。パリの小汚い街角でアクロバットをする半裸の男たちに囲まれたスーツ姿のモデル。体をそらせて2頭の象に触れるイブニングドレスのモデル。意外な組み合わせの中で、モデルも服も美しく撮れている。この路線を続けていれば、ファッション写真の巨匠で終わっていたかもしれないが、そうはならなかった。 肖像写真家を自称するとおり、アヴェドンの真骨頂は著名人から無名の人にいたるまでの肖像写真にある。背景はすべて白で余分なものはない。鉱夫も、作家も、ウェイトレスも、大道芸人も、強烈な存在感で迫ってくる。誰でもよいわけではなく、アヴェドン好みの被写体ばかりだが、これらの人を見ていると、スターやモデルである必要はない、人間は皆素晴らしいという感動が湧き上がる。精神障害者を描いたジェリコーの肖像画の傑作に通じるものがある。 それにしても、展示のしかたが巧い。似た被写体を隣り合わせにしている。ウインザー公夫人の隣に作家ドロシー・パーカー。不安そうなまなざしと深い首のシワ、赤く塗った薄い唇がそっくりだ。アイゼンハワー大統領の隣は奴隷だった男性。肌の色も身分も違うが、耳の形と薄い唇にできたシワは同じだ。2階の展示場のアヴェドンの隣の少女は、娘かと思うくらいよく似ている。 異なる雰囲気の肖像を対比させた展示もある。少女の初々しさをたたえたビートルズの隣には、父親譲りの自信と大物振り、傲慢ささえ漂わせるピカソの子供たちがいる。どっちが大人でどっちが子供かわからない。絶頂期のビートルズの4人がこんな表情を見せたことにハッとさせられ、やさしい気持ちになる。(羽) |
![]() ジュ・ド・ポーム:コンコルド広場、 チュイルリー公園内。9月28日迄。月休。 |
●Peter DOIG (1959-)![]() スコットランド生まれ。トリニダード島やカナダで少年時代を過ごす。新聞や雑誌の写真などからインスピレーションを得た絵画は、画家の記憶の中の風景のようだが、鑑賞者の誰もがいつか見たような普遍的なイメージをも紡ぎ出す。1994年度ターナー賞受賞。 9/7迄(月休)。 パリ現代美術館 : 11 av. du Pr市ident-Wilson ●Miroslav TICHY (1926-) 〈バカンスで南仏へ出かけたなら〉 ●Hans HARTUNG (1871-1958) |
